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On the Production
by 井口健二
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■ポセイドン、ハイジ、僕の世界の中心は君だ、バタリアン4、ウルトラヴァイオレット、王と鳥、サイレントヒル
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ポセイドン』“Poseidon”
ポール・ギャリコの原作で1972年に映画化された『ポセイド
ン・アドベンチャー』のリメイク。大晦日の夜、突然の高波
で転覆し、上下逆さまになった大型客船の中を、船底にある
はずの脱出口を求めて登って行く人たちのサヴァイバルが描
かれる。
前々回、巻頭約20分の特別映像を紹介したが、今回はその完
成披露試写が行われ、全編を大画面で見ることができた。
それで、まず驚いたのは上映時間が99分しかなかったこと。
ペーターゼン監督作品は、前作『トロイ』は2時間42分あっ
たし、それ以外の作品もどれも2時間を超えている。また、
1972年のオリジナルは117分だったから、それに比べてもず
いぶんと短い。
しかし短くなった分、登場人物には迷っている暇もないし、
何しろ物語が一気に進んでしまう。そのテンポにはもの凄い
ものがあった。
オリジナルは、オスカーを受賞したThe Morning Afterとい
う主題歌の題名から判るように、真夜中から翌朝まで掛かる
話で、しかもその後も船は浮いているという展開だったが、
今回の主人公たちは、転覆した船がそんなに長く浮いている
はずはないという認識で、何しろ時間との競争で脱出劇を演
じて行く。そして彼らの背後からは、水や炎が刻一刻と迫っ
てくるのだ。
ジェットコースター・ムーヴィと言えばその通りだろう。細
かなことは言わずに、映像の迫力で、力づくで押し切ってし
まう感じの作品だ。これは言い換えるとゲーム感覚となるか
も知れない。このゲーム感覚は、日本の観客には案外受けそ
うな感じもするものだ。
ただし、上映時間が短い分、人間ドラマはほとんど描かれな
い。人間関係の描写は、父親と娘とその恋人の話などが僅か
にはあるが、その経緯などはほとんど語られない。特に、リ
チャード・ドレイファスが演じる人物の背景などはほとんど
判らないままだ。
事前の情報でドレイファスの役柄は、世間から見捨てられた
ゲイの男となっていたが、実際の作品でもほとんどそれだけ
だった。これだけの人物設定で役者が演じてみたいと思える
ものかどうか、ちょっと疑問にも感じてしまうところだが…
一方、この作品が原作ものである以上、物語の改変や人物設
定の変更がどこまで許されるものか。すでに原作が映画化さ
れて、その続編を原作から離れて映画化するときや、コミッ
クスの映画化のようにキャラクターだけを活かすのなら、そ
れなりに自由な発想の映画化は許されると思う。だが、本作
はあくまでもギャリコの原作そのものの映画化なのだ。
そう考えたときに、敢えて人物を描かないことは、一つの原
作に対する敬意の表し方ではないかと思えてきた。
試写で見なかったり、気に入っていなかったりなので、ここ
には書かなかったが、昨年公開された某日本SFの映画化の
リメイクでは、原作小説の次空を超えた雄大な物語を、ちま
ちまとした現代兵器を戦国時代に持ち込んで大暴れするだけ
の貧しい物語にしてしまっていた。
そんな原作を蔑ろにした作品は、リメイクとは言わずに別の
題名でオリジナル作品として映画化すればいいのであって、
原作の知名度だけを利用した姑息なやりかたには不快感だけ
が残ったものだ。
その点から言えば、今回の『ポセイドン』の映画化では、敢
えて原作とは異なる人物設定の部分は省略することで、原作
の改変を最小限に押さえ、原作を現代化することに挑戦した
という解釈もできそうだ。それはそれで、理解したいとも思
えるところだ。
それと、前作でははっきりとしなかった脱出口が、今回は明
瞭に示されたことも納得できた。

『ハイジ』“Heidi”
ヨハンナ・スピリの名作を映画化したイギリス映画。撮影は
スロヴェニアで行われ、原作の雰囲気にピッタリの素朴なア

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05月30日(火)
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