ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460257hit]
■母たちの村、アンジェラ、バイバイママ、夢駆ける馬ドリーマー、トランスポーター2、ママが泣いた日、カサノバ
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『母たちの村』“Moolaadé”
1923年生まれ、アフリカ映画の父とも呼ばれるウスマン・セ
ンベーヌ監督による2004年作品。同年のカンヌ映画祭・ある
視点部門のグランプリにも輝いている。
アフリカのとある村。村の中央には蟻塚を模したモスクが建
ち、一夫多妻制の家族がそれぞれ塀に囲われた住居で暮らし
ている。そして妻たちは、自転車に引かれた移動雑貨屋でラ
ジオを聞くための電池を買う。
そんな村で、ある一家の第2妻コレの許に4人の少女が保護
(モーラーデ)を求めて駆け寄ってくる。彼女たちは10代の
娘に科せられたFGM(female genital mutilation)を恐
れ、数年前に自分の娘のFGMを拒否したコレに助けを求め
てきたのだ。
その時、一家の主人は外出しており、コレは独断でモーラー
デの綱を門に張って彼女たちを保護することを宣言する。し
かし2000年以上も続くと言われるFGMを、他人の子供にも
拒否したことは、村の伝統を守る人々にいろいろな波紋を投
げかけて行く。
映画の中で主人公のコレは、FGMを受けたために2人の子
を死産し、3人目も帝王切開で産まなければならなかった。
そしてその出産を助けた女医から、FGMの真実を教えられ
たようだ。しかし今でも夫との夜には自分の小指を噛み切り
そうな苦痛に耐えている。
そんな現実の苦痛が自分の娘のFGM拒否につながり、少女
たちの保護へと立ち上がらせるのだろう。だがその行動は、
彼女だけでなく、他の人々にも累を及ぼすことになる。因習
と対決、そして新しい時代を産むことへの苦痛を見事に描い
た作品だ。
僕がFGMの存在を知ったのはかなり前だと思うが、時とし
て死に至り、生き延びてもその後の生活に苦痛を生み出すそ
の儀式が、WHOなどの勧告にも関わらず、今も続いている
という事実は信じがたいことだ。でもそれが現実なのだ。
監督の出身地はセネガルだが、映画の撮影はブルキナファソ
で行われている。でもそれは迫害を受けたということではな
く、映画はモロッコ、コートジボアール、ベニン、マリ、ブ
ルキナファソ、そしてセネガルの協力で作られたとされる。
つまり本作は、アフリカの複数の国が注目し、その協力で作
られた作品ということだ。
そして撮影現場となったブルキナファソの村は、乾燥した風
土のためか抜けるように澄み切った映像で捉えられ、そんな
美しい風景の中で、恐ろしい現実が今も続いていることを、
映画は訴えている。
なお、FGMについて映画のチラシには全くその言葉が記載
されていない。日本に住む我々にとっては、確かに遠い国で
起きている問題かも知れない。しかし、同じ地球上に住む人
間としてこれは決して見逃すことのできる問題ではない。
例えば『ホテル・ルワンダ』に関心を寄せてくれたような人
たちが、この問題にも関心を寄せてくれることを切に望みた
いものだ。アフリカの抱える問題は内戦だけではないのだ。
『アンジェラ』“Angel-A”
リュック・ベッソンが1999年の『ジャンヌ・ダルク』以来、
6年ぶりに手掛けた21世紀最初の監督作品。
ただし、物語自体は1993年の『レオン』の後で15ページのシ
ノプシスを書き上げていたということで、感覚的には『ニキ
ータ』『レオン』に続く作品ということになる。しかし当時
のベッソンはこの物語を映画化せず、SF大作の『フィフス
エレメント』に進んでしまったものだ。
主人公はアルジェリア人の男だが、抽選に当ったというアメ
リカ市民権を持ち、パリで暮らしている。仕事は輸出入だと
言うが、怪しげだ。そして映画の巻頭では、借金取り立て屋
の暴行を受け、返さなければ命はないと言われてしまう。
男には他にも多額の借金があって、もはや他から借りる術も
[5]続きを読む
03月30日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る