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On the Production
by 井口健二
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■キスキス,バンバン、隠された記憶、ぼくを葬る、プロデューサーズ、戦場のアリア、僕の大事なコレクション
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『キスキス,バンバン』“Kiss Kiss,Bang Bang”
『リーサル・ウェポン』でアクション映画の新時代を切り拓
いたと言われる脚本家シェーン・ブラックが、自らの脚本を
初監督した作品。
ひょんなことからハリウッドでスクリーンテストを受けるこ
とになった元こそ泥の男が、役作りのためにゲイを公言して
いるタフガイ探偵と行動を供にすることになるが、彼らの向
かうところに死体が次々に登場してしまう。
その一方で、主人公は幼馴染みの女性と再会し…
ブラックは、子供の頃からハードボイルド・ミステリーのマ
ニアだったそうで、その思いの丈をスクリーンにぶつけたと
言えそうな作品。名文句になりそうな台詞や、パロディ掛か
った演出も満載で、同じ趣味の人には思わずニヤリという感
じのものだ。
謎の美女が登場したり、無関係に思えた2つの事件が結びつ
いて大きな事件に発展して行くというのは、映画の中で主人
公が説明するハードボイルドの展開そのもの。そんなハード
ボイルドの解説も兼ねた作品になっている。
作者の分身とも言える元こそ泥を演じるロバート・ダウニー
Jr.や、探偵を演じるヴァル・キルマーもはまっているし、
物語には洒落も利いていて、同じような傾向の作品では、以
前にハリスン・フォードの主演で『ハリウッド的殺人事件』
というのがあったが、僕は本作の方が面白く感じた。
ただ、主人公がナレーションも勤めるという構成は、ハード
ボイルドものではよくあるとはいうものの、ちょっと現代に
は時代錯誤という感じもする。それでフィルムを止めたり、
巻き戻したりという演出も、ちょっと才に走ったという感じ
もしてしまう。
実際は、パロディにしたいのか、ハードボイルドの復権を目
指すのか、その辺をもう少し明確にして欲しかった気もする
が、逆にちょっとやりすぎにも思える演出で、それらの作品
の面白さを現代に再現するということでは成功しているとも
言えそうだ。
ブラックの本当の狙いはこの作品だけでなく、この後にもっ
と本格的なハードボイルドが続いてくれることを期待してい
るのかも知れない。その呼び水になってくれれば良い、そん
な感じにも思える作品だった。
『隠された記憶』“Cache”
ドイツ生まれのミヒャエル・ハネケ監督の2005年作品。カン
ヌ映画祭の監督賞やヨーロッパ映画賞の作品賞なども受賞し
ている。
ハネケ監督は、前作のカンヌでグランプリを受賞した『ピア
ニスト』が、作品の見事さは理解できるもののどうにも自分
の性に合わず、困ってしまった記憶がある。今回の作品も一
面ではそれに近いところもあるが、今回はそれに勝るものが
あると感じた。
主人公はテレビで文芸番組のホストなども勤める人物。出版
社に勤める妻と思春期の息子がいて、生活は安定していた。
しかしその彼の元に1本のビデオカセットが届けられたこと
から全てが狂い始める。
そのカセットの映像には、彼の家の正面が延々と写されてい
るだけだったが、それは彼が監視下に置かれていることを暗
示するものだった。そのカセットを最初は放置した主人公だ
ったが、次には無気味な絵が添えられて届き、そこには彼の
生家が写されていた。
そして主人公は、その絵の内容と生家の映像から、幼児期の
記憶を呼び起こされることになる。それは家で働いていたア
ルジェリア人の一家に関するもので、暴動に巻き込まれて一
家の夫妻が亡くなった後、家に引き取ったその一人息子を、
自分が迫害した記憶だった。
そしてビデオの映像に導かれるまま、彼はそのアルジェリア
人の後を追うことになるのだが…謎の監視者とアルジェリア
人との関係、やがて息子が行方不明となり、主人公の焦燥が
頂点に達する。
展開は有り勝ちなものだが、演出の巧さで主人公の焦燥が痛
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03月14日(火)
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