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On the Production
by 井口健二
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■Vフォー・ヴェンデッタ、ファイヤーウォール、SPIRIT、ブラッドレイン、ククーシュカ、南極物語
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『Vフォー・ヴェンデッタ』“V for Vendetta”
『マトリックス』のウォシャオスキー兄弟の脚本、製作によ
るパラレルワールド・アンチユートピア作品。イギリス出身
のコミックス作家デイヴィッド・ロイドが1980年代に発表し
たグラフィックノヴェルの映画化。
昨年5月のカンヌ映画祭に、ナタリー・ポートマンが坊主頭
で来場して話題になったが、その原因がこの作品だった。共
演は、『マトリックス』でエージェント・スミス役のウーゴ
・ウィーヴィング。
第2次大戦より後のある時代。アメリカはその後に引き起こ
した第3次大戦で疲弊し、今やイギリスの植民地と化してい
る。そのイギリスの隆盛は、混乱期に導入した全体主義的な
国家体制が功を奏したもの。しかしその体制は、今や独裁主
義へと変貌していた。
そして、ある夜間外出禁止令が発令された夜のこと。主人公
のイヴィーは勤務先であるテレビ局の上司の家に招かれてい
たが、用意に手間取り街頭で外出禁止時間になってしまう。
しかも隠れようとして入った路地で自警団に捕まり、あわや
となるのだが‥
Vと名乗る仮面の男は、イヴィーを自警団から救い出し、彼
女をとある建物の屋上に導く。そしてその夜、ロンドン中に
鳴り響く「序曲『1812年』」の調べと共に華々しい打ち上げ
花火が夜空を彩り、Vの活動が開幕する。
物語のキーワードは11月5日。イギリスではガイ・フォーク
ス・デイと呼ばれ、1603年にガイ・フォークスらによる国家
転覆計画が失敗したことを祝う祝日だが、映画での意味は異
なる。映画でVが被っている仮面はそのガイ・フォークスの
顔を表わしたものだ。
原作の書かれた1980年代は、ヴェトナム戦争で疲弊していた
アメリカが、ソ連のアフガン侵攻失敗などをてこに、地球唯
一の強国に成り上がって行く時代だが、ソ連の失敗が無けれ
ばこんな世界も有り得たかもしれない、そんな物語だ。
いやある意味、今のアメリカがここに描かれたイギリスその
ものではないか、そんな視点も見え隠れする。そんな映画の
作りにもなっている。
実際、映画の中ではマスコミ操作による国家体制維持のため
の姑息な手法なども描かれるが、これなどはアメリカのテロ
対策では当然行っている思われるものだ。しかも国民は、そ
のことを暗に知りながらも全く行動を起こそうとしない。
そんなアメリカ批判とも取れる作品の全体に漂う雰囲気が、
多分Varietyなどの体制派映画マスコミでの批判的論調にも
つながったのだろうが、僕などは見ていて溜飲が下がる思い
がしたものだ。
日本公開は4月29日、アメリカでは3月中旬の公開だが、こ
の作品に対する大衆の反応がその国の健全さの指標にもなり
そうな、そんな問題提起を含んだ作品にも見えた。
なお、映画では巻頭からナレーションや長台詞が満載で、文
字の多いグラフィックノヴェルを髱髴とさせる。特にウィー
ヴィングの台詞は、さすがに舞台役者でもある人らしく朗々
としてリズムがあり、聞いていて心地良かった。もっとも、
彼の顔は終始仮面の陰なので、どんな長台詞でも苦はなかっ
たとは思われるが…
実は本作は、当初昨年秋に公開の予定が爆弾テロ事件などの
影響で公開が控えられた。その理由となったシーンは、かな
り強烈なもので、見る人によっては神経を逆撫でされるだろ
うとは思うものの、思わず見惚れてしまうものだった。

『ファイヤーウォール』“Firewall”
小さな銀行だが世界一のセキュリティを自認する銀行のセキ
ュリティ担当重役が、家族を人質に取られ、がんじ絡らめの
状況の中で、自らの立てたファイアウォールの穴を探しつつ
犯人たちへの反撃を試みるというアクションサスペンス。
主演のハリスン・フォードが久々にアクションに帰ってきた

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02月28日(火)
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