ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460133hit]

■刺青、かもめ食堂、B型の彼氏、ルート225、トム・ダウド
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『刺青』
谷崎潤一郎原作の3度目の映画化。同じ原作からは1966年に
増村保造×若尾文子と1984年に曾根中生×伊藤咲子という映
画化があり、今回はこの原作を、ピンク映画監督の佐藤寿保
監督と、グラビアアイドルの吉井怜の主演で映画化した。
僕は過去の映画化を見てはいない。しかし、それぞれが当時
の社会状況の中でそれなりに頑張った作品であると評価され
たことは記憶しているものだ。そこで今回の映画化だが、今
の時代にこの表現内容ではいくらなんでも納得できないと言
うところだろう。
僕は原作も読んではいないが、谷崎文学と言うとエロティシ
ズムという連想を持つ。そんな心積もりで見に行った観客に
とって、この作品の期待外れの度合いは余りに大きすぎるの
ではないかと思われる。
少なくとも今の時代に、女優がバストも露にできないのなら
この映画化への主演は断るべきだし、製作者もそのような女
優を起用するべきではない。監督もそれくらいの説得もでき
なかったのかというところだ。それに見え見えの吹き替えも
やめるべきだろう。
それにもう一つ納得できないのは、この映画化の製作の意図
だ。実は映画のプロローグとエピローグ近くに刺青をした人
物が襲われるシーン登場する。ここでは暗視鏡で衣服の下の
刺青を確認するなど、それなりの描き方がされていた。
これを見ると、この映画の物語の裏では連続猟奇殺人のよう
なものが起きているらしい。そこでこの殺人を契機として物
語が語られたのなら、それなりにこの程度の描写でも許され
るのではないかという気もしたものだ。
つまりこの映画化を、ポルノグラフィーにするかミステリー
にするかというところだが、現在72分の上映時間にあと20分
ぐらい事件捜査などの描写を足して、90分前後のサスペンス
ドラマにすれば、結末も含めてまずまずの作品になったと思
えるのだが…
それにしても、ヴィデオ製作の画質の悪さには今回も辟易し
た。だいたい本作は『刺青』という題名で、女体に描かれた
刺青を売り物にする作品だと思うが、そのシーンが画素不足
のモザイク状態では作品の価値自体が存在しないことになっ
てしまう。
製作者はこんな劣悪な画質になるとは予想していなかったの
かも知れないが、素人映画ではあるまいし、これくらいはち
ゃんとした製作体制を採ってもらいたかったものだ。
(この作品は、今年1本目の試写で見た作品であり、また製
作体制に改良の余地はあると思えるので、批判的ではありま
すが掲載することにします)

『かもめ食堂』
2003年ベルリン映画祭の児童映画部門で特別賞を受賞してい
る荻上直子監督の第3作。
その受賞した第1作の『バーバー吉野』は見逃しているが、
実は監督の第2作は去年の同じ1月14日付の映画紹介でかな
り手厳しく批判したものだ。でも今回の作品を見ると、この
監督の良さが何となく判るような気がしてきた。
舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。湊町でもあるこの都
市の片隅に、フィン語でruokala lokkiとその下に日本語で
「かもめ食堂」と書かれたカフェがあった。その店は1人の
日本女性によって営業されていたが、通りかかる人はただ覗
くだけでなかなか入っては来ない。
しかし女性経営者は、毎日コップを磨き、何時の日か客が訪
れるのを待っていた。そしてその店に、ニャロメのTシャツ
を着た日本かぶれの学生が入ってきたことから物語が動き始
める。さらにその店に、その学生の要望を叶えるために町で
話し掛けた日本人旅行者が加わって…
この女性経営者を小林聡美が演じ、日本人旅行者の役に片桐
はいりと、そしてもう1人の旅行者役にもたいまさこ。この
3人だけが日本人で、他はアキ・カウリスマキ監督の『過去

[5]続きを読む

01月14日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る