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On the Production
by 井口健二
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■サウンド・オブ・サンダー、マクダル/パイナップルパン王子、アメノナカノ青空
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『サウンド・オブ・サンダー』“A Sound of Thunder”  
タイムトラヴェラーが過去で犯したちょっとした過ちによっ
て、現代に大変なことが捲き起ってしまうというレイ・ブラ
ッドベリの短編小説の映画化。             
2055年。タイム・サファリ社は、開発されたばかりのタイム
マシンを使って独占的に事業を展開していた。この会社は、
一応は政府の管理下にあるものの、利潤の追求のために金持
ちを集め、巨額の料金で恐竜狩りを実施しているのだ。  
その管理とは、@過去のいかなるものも変えてはいけない。
A過去にいかなるものも置いてきてはならない。Bいかなる
ものも持ち帰ってはいけない…というもの。       
そのため狩りの実施では、TAMIと呼ばれる超コンピュー
タで死亡寸前の個体を割り出し、その5分前に現地に赴く。
そして現地には、割り出された死亡位置まで浮遊回廊が敷か
れ、客がそこから足を踏み出すことは禁じられていた。  
ところがちょっとしたハプニングからこの管理が破られ、そ
の結果は現代に重大な影響を及ぼすことになってしまう… 
というお話は、ブラッドベリの読者なら先刻ご承知のことと
思うが、この展開は小説では良くても、ちょっとこれだけで
は映画には物足りない。そこで今回の映画化は、実はここか
ら始まると言っても過言ではないもので、つまり映画では、
改変されてしまった現代を元に戻すことがテーマとなる。 
一方、通常のタイムトラヴェルものでは、戻ってくると現代
は全て変ってしまっているのが普通だと思うが、この作品で
は進化の過程に従って徐々に影響が現れるというのが味噌。
まず植物が変り、次に爬虫類、そしてその進化の頂点が人類
という発想だ。                    
従って、人類が影響を受けるまでには時間差があり、その時
間差がタイムリミットとなって、主人公はこの間に原因を究
明し、それを修復しなければならないことになる。    
この発想にはなるほどと思わされたが、このストーリーは、
『サラハ』も手掛けたトーマス・ディーン・ドネリーとジョ
シュア・オッペンハイマーによるもののようだ。     
そして、この映画化の計画は2000年頃に立上げられ、2002年
には準備が整えられて撮影も開始されたのだが、その直後に
撮影地チェコの水害などで撮影が遅延し、当初予定されてい
た2003年の公開が2年近くも遅らされてしまったものだ。 
因に映画では、舞台となる2055年のシカゴの景観などは、改
変の前後共にCGIで形成され、そこに登場人物だけが合成
される仕組みになっている。これは昨年公開の『スカイキャ
プテン』などにも先立って試みられたもので、公開の遅れで
先を越されてしまったのは残念なところだ。       
しかもこの間のCGIの進歩が微妙に影響して、全体にちょ
っと古臭さを感じてしまう。ただし映画は、未来デザインを
シド・ミードの事務所が担当するなど、ちょっとレトロな感
じにも作られていて、意外とそれが映像にマッチしているの
は怪我の功名というところだろう。           
また映画では、前提として人類以外の哺乳類が絶滅している
という説明があるなど、細かな考証がされていて、意外と慎
重に作られている。その辺の2人の脚本家の見識には、これ
からもちょっと期待してみたいところだ。        
なお、字幕では訳されていなかったが、登場人物の発言で、
コロンブスのアメリカ上陸、アームストロングの月着陸、ブ
ルベイカーの火星着陸に次ぐ偉業という台詞が出てくる。 
ここでブルベイカーというのは、本編の監督ピーター・ハイ
アムズの1977年作品『カプリコン1』の主人公の名前で、セ

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11月30日(水)
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