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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(コンペティション)
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※このページでは、東京国際映画祭のコンペティション、※
※アジアの風および日本映画・ある視点部門で上映された※
※作品から紹介します。なお紹介する作品は、コンペティ※
※ション部門の作品が14本と、その他の作品が13本です。※
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<コンペティション部門>
『バイ・バイ・ブラックバード』
フランスでフォトグラファーとして活躍するロバソン・サヴ
ァリ監督の長編第1作。ヴィム・ヴェンダースが絶賛したと
も伝えられる。
高所享楽症とでも言うのかな、高いところが大好きな男が、
サーカス団の空中ブランコ乗りの女性に憧れ、そのサーカス
に入団して彼女を空中で受けとめることを夢見るが…
巻頭、雪の降り頻る川の上空、多分架橋の工事現場で、ワイ
アーに吊るされた鋼鉄材の上でくつろぐ主人公が描かれる。
このシーンはCGIの合成で作られているものだが、これが
物凄い高さの感じを出しており、下の凍結しかけた川を進む
船の描写などが見事に美しかった。それ以降も、夜のサーカ
ステントの上で花火を見上げるシーンなど、背景にCGIを
配したり、暗い画面でも背景をちゃんと写し込んだり、とに
かく画像の美しさはさすがフォトグラファーの作品という感
じのものだ。
でも、如何せんお話ができていない。結局のところ物語は、
すでに恋人のいるブランコ乗りの女性に勝手に片思いした主
人公が、振られて精神に異常を来すというだけのもので、こ
れではドラマも何もあったものではない。
出演した俳優、特にヒロインを演じたイザベラ・マイコは、
2000年公開の『コヨーテ・アグリー』にも出演していたよう
だが、それなりのサーカス芸なども演じて見せてがんばって
いただけに、ちょっともったいない感じの作品だった。

『女たちとの会話』
ハンス・カノーサ監督の長編第1作。ほぼ全編が左右2分割
画面という思い切った構成で、映画祭では審査員特別賞と、
主演のヘレナ・ボナム=カーターが女優賞を受賞した。
物語は、元夫婦の2人が、元夫の妹の結婚式で花嫁の介添え
役として招かれた元妻と再会し、思い出話をしている内に、
行き掛かりで一夜を伴にしてしまうが…
左右の画面に男女の一人ずつが配され、横並びで話すシーン
ではあえてその間隔が分からないようにしたり、向かい合う
シーンではそれぞれがほぼ正面を向くなど、トリッキーな画
面が連続する。さらに、その一方の画面が登場人物の想像に
なったり、思い出になったり、とにかく2分割画面が最大限
有効に使われた作品と言えそうだ。
主演2人(相手役は『ザ・コア』のアーロン・エッカート)
は、終始2台以上のカメラで撮影されていたということで、
その緊張感も普通ではなかったと思われるが、観る方もかな
り緊張を要求される作品。幸い英語の作品なので映画祭では
お決まりの英語字幕が付かなかったのは救われたが、日本語
の字幕を追いながらの鑑賞には体力も要求される。ただし、
物語自体はあえて他愛ないものに作られているし、その点は
計算された作品と言えそうだ。
なお、最初にほぼ全編と書いたが、実は最後に一瞬だけ画面
が一つになる。これは俳優だけ観ていると気が付かないが、
背景で確認できるもので、その意味は…?というところだ。

『ダラス地区』
ルーマニア生まれだが、幼い頃からオーストリアで育ったと
いうアドリアーン・ローベルト・ベヨー監督の作品。今やゴ
ミの集積場と化したジプシー村を再訪した元ジプシーの教師
を巡る物語。
映画の題名は、その村の中心に置かれたバスを改造したカフ
ェの店主が、テレビシリーズ『ダラス』のビデオを所有して
いて、それがその店及び地区の呼び名になっているというも
の。村といっても一面がゴミの集積場で、住民たちはその中
からペットボトルなどを回収して現金収入を得ているが、そ
の価格は地元の顔役に搾取されている。また、回収には子供

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11月07日(月)
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