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On the Production
by 井口健二
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■第91回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最初は、映画製作とは直接関係はないが、気になった話題
から。
 この作品については、僕には試写状も届かなかったし、別
段ここで取り上げる義理もないものだが、6月末に公開され
たSF映画“War of the Worlds”(宇宙戦争)について、
結末がいい加減だとか、捻りが無いなどという批判を見かけ
たので、SFファンとして一言ここで述べておきたい。
 確かにこの物語はあっけなく終結する。しかしそれは、H
・G・ウェルズが描いた原作通りの展開なのであって、しか
もこの原作は、この結末のあっけなさゆえに成立している物
語とも言える。従って、もしこれ以外の結末を付けたとした
ら、それは最早ウェルズの映画化とは呼べなくなってしまう
ものなのだ。
 ここで、上記のようなことを言っている人たちが、例えば
地球人が大々的に反攻して侵略者を叩きのめすようなものを
期待していたのだとしたら、それこそが思い上がりというも
のであって、そのような物語はウェルズが最も否定したかっ
たものだろう。
 つまりこの物語のテーマは、思い上がった地球人にさらに
上位のものがいるかも知れないということを教えたかったも
のであって、その侵略の前に為す術もなかった地球人が自然
界の微生物によって助けられるという皮肉を描いたものなの
だ。しかしそういうことも理解できずに、ただ地球人はいつ
でも偉いという思想に固まっている人たちこそ哀れというも
のだろう。
 ついでに書いておけば、1996年に公開されたローランド・
エメリッヒ監督の“Independence Day”では、地球人の反攻
によって侵略者を撃退するが、ここで侵略者を倒すために利
用した手段は、正にこのウェルズの原作にオマージュを捧げ
ているものなのだ。そしてこの作品がウェルズの没後50周年
の年に公開されたことも考えると、エメリッヒのSFへの思
い入れを感じたものだ。
 つまり、ウェルズの原作に絡めて地球人が反攻する作品は
すでにこのとき作られているのであって、それを改めて作る
必要性は全く無かったとも言える。日本人が歴史を顧みない
国民であることは、あらゆる面で言えることだが、多少なり
ともオピニオンリーダーになるような人たちは、もう少し考
えて発言してほしいと思うところだ。
        *         *
 もう一つ、こちらはポジティヴな話題で、俳優のモーガン
・フリーマンが、半導体メーカーのインテルと組んで、映画
の配信を行う新会社を設立したことが発表された。
 この話題は、インターネット関連の情報なので、日本のウ
ェブ上でも一部で報道されていたようだが、その新会社のこ
とはさておいて、僕はフリーマンとインテルという組み合わ
せが気になったところだ。
 実はこの組み合わせについては、2002年6月15日付の第17
回で報告しているが、フリーマンが長年計画しているアーサ
ー・C・クラーク原作“Rendezvous With Rama”の映画化で
も協力が発表されているもので、今回の報道でその関係が切
れていないことが確認できてほっとしたものだ。
 一方、この映画化に関しては、2002年12月15日付の第29回
で報告したようにパラマウントの参加も発表されているが、
上記したパラマウント製作“War of the Worlds”では、フ
リーマンがウェルズの台詞を代弁するナレーターを務めたり
もしており、この人間関係はかなり期待が高まるものとも言
えそうだ。
 ただしこの計画に関しては、監督にデイヴィッド・フィン
チャーの名前も発表されているが、フィンチャーは後述する
ように、これもパラマウントも絡んですでに来年までスケジ
ュールが詰まっており、このままだとまだ時間が掛かりそう

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07月15日(金)
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