ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■シンデレラマン、せかいのおわり、マダガスカル、8月のクリスマス、ハービー 機械じかけのキューピッド、頭文字D
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『シンデレラマン』“Ciderella Man”          
アメリカ大恐慌時代に、人々に希望の灯をともしたヘヴィ級
ボクサーの実話に基づく物語。             
ジム・ブラドックは過去には数々の栄光に輝いたボクサー。
しかし大恐慌の最中で、彼自身も疲れ果て、リングではクリ
ンチを繰り返し満足な試合をすることもできない。そしてつ
いに、試合を没収され、ライセンスも剥奪されてしまう。 
彼には、妻と3人の幼い子供がいる。彼は生活のため波止場
の荷役に日雇いを求め、試合での負傷を隠しながらわずかな
金を稼ぐ。そして無料の給食に並び、生活保護の給付を受け
るまでに落ちぶれる。                 
しかしその給付でも家族を守れなくなったとき…     
大恐慌時代の希望の星というと、2003年に公開された『シー
ビスケット』を思い出すが、今回は題名通りシンデレラマン
の話なので背景の人間の話も詳細に描かれ、その辺では話も
身近で、日本人の僕らにも判りやすい感じだ。      
実際、主人公の心情も直接的に理解できるし、まあボクサー
という天職があっただけ幸運だったと言うことはできるが、
それが世間の人々の希望になって行くまでを描き出すうまさ
は、さすが脚本アキヴァ・ゴールズマン、監督ロン・ハワー
ドというところだろう。                
主演はラッセル・クロウ、彼を支える妻役をレネー・ゼルウ
ィガー、そしてマネージャー役を『サイドウェイ』のポール
・ジアマッティが演じている。             
それにしても、大恐慌時代の庶民の生活振りはかなり衝撃的
で、さらに後半描かれるフーヴァー村の風景は、つい先日ま
での新宿中央公園を思い出して、その規模の違いに驚くと共
に、こんな時代もあったのだという感じがした。現在のアメ
リカ人の不況感がどんなものか判らないが、日本人にはまだ
まだ現実的な風景のようにも感じた。          
そんな中で、人々が心を一つにして応援できる希望の星、そ
んな希望が今の日本にも必要になのだとは思うが、多様性の
時代にはなかなか難しいという感じもした。人々がもっと素
直だった時代の物語かも知れない。でもそんな素直さが、現
代に一番必要なのかも知れない。そんなことも考えた。  
なお、映像的には、作品のかなりの部分を占める試合の迫力
が素晴らしい。試合はもちろんフェイクだが、特にクレイグ
・ビアーコ扮する悪役ボクサーとの死闘は見事に描かれてい
た。それに、主人公が結構科学的に試合を分析していたこと
を示す描写も興味深かった。              
                           
『せかいのおわり』                  
先回、ジャ・ジャンクー監督の『世界』を紹介したときに、
「こんな青春、今の日本にはあるのだろうか」と書いたが、
ちょうどそれに答えるような作品だった。でも、今の日本の
青春の悩みの線はかなり違うようだ。          
主人公の女性は、美容師の見習いだったり、カラオケの街頭
宣伝員だったり、つまりは定職を持たないフリーター。その
女性が彼氏に振られて、幼馴染みの男性が住む植物デリヴァ
リーの店に転がり込んでくる。             
その店は、ゲイの店長と男性によって営業されていたが、そ
の男性もプレイボーイ気取りで腰が落ち着かない。そんな女
性と男性の、ちょっと奇妙な関係が描かれる。      
結局、男性は彼女が好きなのだが、彼女には「世界が終りに
なって、2人だけになってしまった世界」の幻想があり、そ
の幻想に捕われて現実を直視できない性癖がある。それが2

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06月30日(木)
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