ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ミリオンダラー・ベイビー、バス174、皇帝ペンギン、マイ・リトル・ブライド、初恋のアルバム、ザ・リング2、Little Birds
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ミリオンダラー・ベイビー』“Million Dollar Baby”  
クリント・イーストウッド監督主演で、今年のアカデミー賞
では、作品、監督、主演女優(ヒラリー・スワンク)、助演
男優賞(モーガン・フリーマン)を獲得した作品。    
ただ一人の肉親の娘に会うことを拒否されている初老のボク
シング・トレーナーと、30歳を過ぎて家族とは別れ、ボクシ
ングだけを生き甲斐として暮らしている女性の物語。   
最初は女性のボクサーを否定していた主人公は、彼女のボク
シングにかけるひたむきな情熱に、やがて彼女のトレーナー
となり、ついには世界チャンプを目指すまでになるが…  
以下はネタばれを含みます。              
上記の概要で、単純に『ロッキー』の女性版を頭に描いて見
に行くと、これが大間違い。イーストウッドの監督で、オス
カーも獲るような作品だから、いまさらそんな単純な作品で
はなかろうと思ってはいたが、こういう話が展開されるとは
思わなかった。                    
しかもこの展開が、アメリカでは昨年末に公開されているの
に、見事に報道管制されている。このことからは、この展開
に対するアメリカ人の思いがいろいろ意味で混乱しているこ
とも感じ取れる。                   
僕自身の信条から言うと、この作品の結末は容認できない。
ましてや昨年、現実の同じような出来事が違う形での結末を
迎えたところで、この2つを重ね合わせると、僕自身として
はやりきれない気持ちが残る。             
しかも本来なら、この作品が問題提起となっていろいろな論
争ができるはずなのに、アメリカでそれはなされたという話
もあまり聞かない。そこには、その論争を圧殺するような雰
囲気も感じてしまう。                 
もっとも、イーストウッドが問題提起のつもりでこの作品を
作ったとは考えられないし、現実の出来事が偶然重なっただ
けなのだとは思う。ただし、現実の出来事の方では、その後
に多少の動きも生じたようだが…       
(5月31日付で補足があります)
                       
『バス174』“Onibus 174”             
2000年6月にリオデジャネイロで発生したバスジャック事件
を、当時のテレビ報道の映像と、後日の関係者へのインタヴ
ューでまとめたドキュメンタリー作品。いわゆる再現映像は
用いず、全てが実際の映像で綴られている。       
ストリート・チルドレンだった男が、バス強盗を試みて失敗
し、そのまま乗客を人質にとって立てこもる。そのバスを警
官隊が取り囲むが、報道陣の集結も速く、警備区域の設定の
遅れもあって、テレビカメラが至近距離に置かれることにな
ってしまう。                     
このため、衆人監視のもとでは警官隊もうかつには射殺など
の手を打てなくなり、事件は膠着状態になってしまうが…こ
の事件を、人質だった女性や覆面の特殊部隊の警官、さらに
犯人の叔母や昔の仲間、児童保護局の担当者らの証言などを
交えて検証して行く。                 
犯人は、ストリートチルドレン多数が警官隊によって虐殺さ
れた事件の生き残りであり、警察への恨みがあったとする証
言や、逮捕され刑務所に入れられることによってますます悪
くなるという現実が、刑務所の劣悪な実体の紹介などによっ
て明らかにされる。                  
ということで、この作品はバスジャック事件だけでなく、そ
の背後にある社会問題を炙り出して行く構成になっている。
ただし作品の構成では、バスジャック事件の報道映像と人質

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04月14日(木)
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