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On the Production
by 井口健二
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■第81回
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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※
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今回はこの話題から。
ピアーズ・ブロスナンの降板宣言などで製作の遅れている
007シリーズ第21作について、この新作の題名を“Casino
Royale”とすることが、映画の配給元のMGMから正式に発
表された。
この題名については、昨年10月1日付の第72回でも触れた
が、本来故イアン・フレミングが執筆した原作シリーズには
長編12作と短編9作があり、過去の映画化では長編タイトル
の内11作分がすでに使用されていた。しかし、1953年に発表
された原作第1作の“Casino Royale”の題名だけは、正式
のシリーズの中では使用されていなかったものだ。
と言うのも、この第1作は、発表の翌年にアメリカCBS
テレビ放送の“Climax”というアンソロジーシリーズの1篇
として最初の映像化が行われており、この際に発生した映像
化権が、正式のシリーズを手掛けるブロッコッリー一族とは
別の製作者の手に渡っていた。
そこでこの製作者は、当初は正当な映画化を考えた形跡も
あるようだが、出演を依頼したショーン・コネリーが断った
ためにパロディ化を思いつき、主人公の一度引退した諜報員
サー・ジェームズ・ボンド役にデヴィッド・ニーヴン、敵役
にオースン・ウェルズ、ウッディ・アレンを招き、監督はジ
ョン・ヒューストンら6人、さらに脚本には、クレジットは
されていないが、ベン・ヘクト、テリー・サザーン、ピータ
ー・セラーズ、ビリー・ワイルダー、そしてアレンも参加し
たという超豪華な布陣で映画化を敢行。その作品『カジノ・
ロワイヤル』が1967年、本家では『007は二度死ぬ』が公
開された同じ年に、コロムビアから公開されたものだ。
ただし、この映画化権はその後に買い戻されたという情報
もあり、題名の使用は可能だったということだが、敢えて使
用は見送られていたようだ。この点の前回の報告は正確では
なかった。ところが、前回報告したソニーによるMGM買収
によって、MGMとコロンビアは共にソニー傘下の会社とな
り、その記念という訳でもないのだろうが、次回作がこの題
名で製作されることになったものだ。
因に、映画化の題名は、第11作までは上述のように原作の
長編タイトルによっているが、第12作から第15作までは短編
のタイトルに基づいている。そして、その後はオリジナルの
タイトルが使用されてきたものだが、実は第16作の『消され
たライセンス』の後に、短編のタイトルから“The Property
of a Lady”を使用する計画もあったようだ。しかし、当時
主演のティモシー・ダルトンの出演拒否などのゴタゴタもあ
って製作が見送られ、ここでシリーズには6年間の中断が生
じることとなった。
そして今回、第21作の監督には、その6年間の中断後の最
初の作品、1995年の『ゴールデンアイ』を手掛けたマーティ
ン・キャムベルの再登板がすでに発表されている。キャムベ
ルは、007以後では、1998年の『マスク・オブ・ゾロ』、
2000年の『バーティカル・リミット』、2003年には『すべて
は愛のために』などを監督し、現在は“Legend of Zorro”
を監督中だが、前回の登板はブロスナン=新ボンドの初登場
作品。今回もボンド役の交代が予定されるときには、好適と
考えられているようだ。
新作の脚本は、ニール・パーヴィスとロバート・ウェイド
が担当し、キャムベルは近々彼らと共に詳細な内容の検討を
開始するとしている。なお、新作では“Casino Royale”の
タイトルは使用するものの、物語は第1作のものを映画化す
るということではなく、オリジナルな物語が展開されること
になる。そして製作される新作は、ソニー傘下のMGMから
2006年の公開が予定されている。
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02月15日(火)
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