ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459637hit]
■火火、隣人13号、火星人メルカーノ、エレニの旅、タッチ・オブ・スパイス、ビヨンドtheシー
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『火火』
信楽焼きで最初の女性陶芸家と呼ばれる神山清子と、骨髄性
白血病のために若くしてその生涯を閉じた息子神山賢一の、
病魔との闘いを描いた実話に基づくドラマ。
高橋伴明の脚本、監督で、清子を田中裕子、賢一をロサンゼ
ルスのリー・ストラスバーグで学んできたという窪塚俊介が
演じ、他に岸辺一徳、池脇千鶴、黒沢あすか、石田えり、遠
山景織子らが脇を固める。
神山清子は、昭和11年佐世保に生まれるが、長崎を追われる
ようにして関西に流れ着き、滋賀信楽の陶芸家と結婚する。
やがて女性作陶家として名を上げるものの、夫とは陶芸の考
え方で対立。しかし離婚後も、幼い子供2人を抱えながら、
一人で窯を守る。
そして女性の窯元を認めない組み合いなどと対立しながら、
古来の信楽自然釉の再現に成功する。だが、その時息子は病
魔に侵され、骨髄ドナー捜しに奔走するが…
公的骨髄バンク設立以前の物語で、そのドナー捜しの困難さ
や骨髄移植の実際などが、かなり丁寧に描かれる。
最初に出奔する夫はさらりと描き、対立する組合もカリカチ
ャライズするなど、全体的に悪い面は出来るだけ描かず、善
人によるドラマが展開するように構成されている。テーマ性
から言ってものこのやり方は見事で、さすがベテランの作品
の感じだ。
母子家庭の物語だが、実際、高橋監督も母の手一つで育った
環境だそうで、その辺りの思い入れが、この作品に見事に昇
華されている。その上に立って、骨髄ドナー捜しのテーマを
見事に描いている。
その一方で、陶芸の実際が、神山清子本人が演技指導したと
いう出演者たちの見事な手捌きで描かれており、特に後半の
力点が闘病に移ってからは、これがアクセントのように描写
される構成も見事だった。
また、田中裕子を中心とした特に女優陣のアンサンブルも見
事で、中でも前作でも注目した黒沢あすかの体当たりの演技
は、この先どこまで行くのだろうという感じだ。
骨髄ドナー捜しの映画は、『ロード88』があったばかりだ
が、このような作品が次々に製作され問題意識を高めるのは
良いことだと思う。
『隣人13号』
井上三太原作のコミックスを、CFやヴィデオクリップで実
績のある井上靖雄が映画化。小学生の頃にイジメラレッ子だ
った主人公が成長して、昔のイジメッ子に復讐する物語。
主人公の村崎十三は一見穏やかそうな青年だが、その内には
凶暴な隣人13号が潜んでいる。その十三が、とある古びた
安アパートの一階13号室に引っ越してくるところから物語は
始まる。
ちょうど同じ頃に二階の23号室には、幼い子供のいる若夫婦
が引っ越してくるが、その若夫婦の夫こそ、小学生の頃に十
三をいじめていたガキ大将の赤井だった。だが、赤井は十三
のことなど憶えていないようだ。
やがて十三は近所の工務店でアルバイトを始め、その工務店
の先輩赤井の下で働くことになる。しかし、赤井の性格は今
も変っていなかった。そしてそのいじめが激しさを増して行
く中で、十三の内の13号が表に現れ始める。
この十三を小栗旬、13号を中村獅童が2人一役(?)で演
じ、メリハリの利いた復讐劇が展開する。しかも、心の中の
[5]続きを読む
12月31日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る