ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■きみに読む物語、照明熊谷学校、永遠のハバナ、戦争のはじめかた、ネオ・ファンタジア、シャーク・テイル
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『きみに読む物語』“The Notebook”          
1996年に出版されて、NYタイムズのベストセラーリストに
56週間(1年以上)連続で掲載され、全米で450万部が発行
されたというニコラス・スパークス著の長編小説の映画化。   
老人ケア施設で、一人の老女に熱心にノートに綴られた物語
を読み聞かせる老人。そこに綴られたのは、1940年の夏に起
った17歳の金持ちの娘と、時給40セントで働く労働者の青年
の恋の物語。                     
青年は、夏の別荘に逗留して町に遊びに来ていた娘に一目惚
れし、最初はすげなくされるが、猛烈なアタックで彼女の心
を射止める。しかし娘には大学への進学が決まっており、夏
が終れば別れなくてはならない運命が待っていた。    
そして2人の恋は激しく燃え上がるのだが…ラヴ・ストーリ
ーの部分は、いわゆる青春ものによくあるパターンかも知れ
ない。しかしここに織り込まれるのが、アルツハイマー病の
女性と、彼女にこの物語を読み聞かせる老人の、もう一つの
ラヴ・ストーリーだ。                 
実は、身内にこの病の患者を持っており、その目で見ている
と、この物語の真の悲しみがひしひしと伝わってくる。幸い
僕の身内はまだここまでの症状にはなっていないが、いつか
こうなってしまうのかと思うと、その恐ろしさも感じてしま
うところだ。                     
しかし全体は、至上の愛の物語と言って良いだろう。恋愛映
画では『マディソン郡の橋』と比較されているようだが、今
から考えるとただの情欲に走るばかりの写真家との不倫の話
などとは、比較することができないほどの純愛の物語が本作
では描かれている。                  
ただ、アルツハイマー病の患者に対する接し方の部分では、
ちょっと説明不足の感じがした。多分治療の一環として、こ
のような接し方が正しいのだろうが、展開として奇異な感じ
もしたし、もう少しその辺の説明が欲しかったところだ。 
それから、ノートが書かれた経緯についても説明があってし
かるべきだろう。原作がどうなっているのかは知らないが、
本来ならここにも大きなドラマがあったはずだ。その物語が
原作にもないとしたら、それはちょっと残念なところだ。 
映画のような奇跡が起ることは、医学的には何の根拠もない
ものだが、やはり奇跡を願わずにはいられない、それが患者
を身近に持つものとしての感想だ。           
                           
『照明熊谷学校』                   
大映京都を出発点に、日活のSP(sister pictureの略だと
いうことを初めて知った)で一本立ちし、その後はロマンポ
ルノから『人間の証明』までの日本映画を支えてきた照明マ
ン、熊谷秀夫氏の足跡を辿ったドキュメンタリー。    
以前『さよならジュピター』の撮影を見学したときに、照明
係の人が長い竹竿1本で天井に吊るされたライトの向きなど
を、いとも簡単に変えるのを見たことがある。原始的なやり
方だと思う反面、こういう人たちが映画を支えているのだと
思ったものだ。                    
このドキュメンタリーでは、そんな原始的な話までは出てこ
ないが、熊谷氏が編み出したいろいろなテクニックや苦労話
が、完成された作品の映像と共に紹介される。その映像の数
25本というのは、日本のこの手のものとしてはよく集められ
たものだ。                      
僕自身、元々が技術系の勉学をした人間であるし、このよう
な創意工夫や苦労話は聞いていて非常に興味がある。その点

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11月30日(火)
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