ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■オーバー・ザ・レインボー、ボン・ヴォヤージュ、スカイキャプテン、エメラルド・カウボーイ、エクソシスト・ビギニング
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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次の紹介文には重大なネタばれがあります。読むときはその
つもりで読んでください。反転すると読めます。     
『オーバー・ザ・レインボー』(韓国映画)       
交通事故で部分的記憶喪失になった気象予報士の男が、記憶
の中の女性を求めて自分の過去を検証して行く物語。それに
協力するのは、大学時代のサークルのメンバーで、同じくメ
ンバーだった親友の恋人だった女性。          
しかしいくら調べても記憶の中の女性の正体は判らず、やが
て献身的に協力してくれる女性に好意を感じた主人公は、過
去を探ることをやめ、現実の彼女を愛そうとするが…。その
直後、彼女の職場である地下鉄の遺失物係に重大な手掛かり
が届けられる。                    
主人公が記憶喪失の物語というと、どうしても『心の旅路』
を引き合いに出さない訳に行かない。しかし、ジェームズ・
ヒルトンの原作をマーヴィン・ルロイ監督が映画化した1942
年の作品は、今ではちょっと時代がかったメロドラマという
イメージだ。                     
その点で、この作品の展開は現代的で全く見事としか言いよ
うがない。最初は部分的記憶喪失という現象がちょっと都合
が良すぎるようには感じるが、そこにはちゃんと理由もある
し、最後に辻褄が合って行く様子は見ていて納得でき、気持
ちの良いものだった。                 
なお、試写会では結末の映像に疑問を持っている人がいたよ
うだったが、あれはカメラの目線であって、登場人物の目線
ではないことは理解するべきだろう。こういう手法はよく使
われるものだし、その直前のシーンも同様だから誤解は生じ
ないはずだが…。                   
未来を予想する気象予報士と過去を保管する遺失物係という
主人公たちの人物設定にも上手さを感じるし、過去と現在を
交錯させながら、徐々に謎を解いて行く展開も巧みで見事。
特に韓国では兵役で空白が生じてしまうという事情も上手く
利用されていた。                   
物語に破綻は見当たらなかったし、チョ・ミュンジュの脚本
は実に巧みで、監督のアン・ジヌは新人のようだが、さすが
『シュリ』などのカン・ジェギュ・フィルムの作品という感
じだ。主演のイ・ジョンジェとチャン・ジニョンの雰囲気も
良かった。                      
ただし、劇中劇で主人公が雨の中で踊るシーンでは、踊りは
“Singin' In The Rain”なのに、音楽が“Raindrops Keep
Fallin' On My Head”になっていたのは何故なのだろう。 
このシーンでは、踊りと音楽が妙に一致しているのも不思議
な感じだったが、1952年製作の原作映画の著作権が切れた年
に本作は製作されているものだし、最近このダンスシーンの
パロディ染みた使われ方は結構見ているようにも思うが、わ
ざわざこのようにした理由が思い当たらない。      
因に、本作の主題歌には、題名にもなっている『オズの魔法
使い』の主題歌がストレートに使われているのだが…

『ボン・ヴォヤージュ』“Bon Voyage”         
イザベル・アジャーニの主演で、1940年6月のパリ陥落を背
景にした歴史ロマン。                 
アジャーニは1955年生まれだから来年には50歳になる。その
彼女が2003年製作のこの作品では、見事に可愛い女を演じて
いるのだから、演技力の凄さを感じてしまう。      
1940年のパリ。アジャーニ扮する女優のヴィヴィアンヌは、
主演の新作の試写会を終えた夜、以前からしつこく言い寄っ
ていたパトロン気取りの男を自宅で殺してしまう。そして、

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10月13日(水)
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