ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ジャスティス/闇の迷宮、ロード88、IZO、マーダー・ライド・ショー、コウノトリの歌、キング・アーサー
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ジャスティス/闇の迷宮』“Imagining Argentina”   
クリストファー・ハムプトンの監督、アントニオ・バンデラ
ス、エマ・トムプスン共演による、ちょっと捻りのあるポリ
ティカルスリラー。                  
1976年のクーデターにより軍部が政権を握ったアルゼンチン
で起きた実話を基づく作品。              
ジャーナリストの妻と愛娘と共に暮らす主人公。その妻が、
軍政下で失踪した人々の謎に迫る記事を発表した途端、明ら
かに誘拐され失踪者となる。ところが警察は、確実な目撃者
がいるにも関わらず、まともな捜査を行おうとしない。  
その頃から主人公は幻覚を見るようになる。それは失踪者た
ちの姿が見えるもので、彼自身がそれは真実であると確信す
るようになる。そしてそれを人々に伝えるための集会を開く
が、彼には自分自身の妻の現在を見ることが出来ない。  
一方、誘拐された妻は、軍の監視下におかれ数々の陵辱を受
け続けるが、彼女は自分の信念を曲げない。そしてついに、
彼の集会も軍部の監視を受けるようになり、さらに彼の仲間
や娘までもが失踪者となってしまう。          
映画の最後には、70年代以降の現在までの世界中での政治
に関わる失踪者の数が次々に表示される。その総数がいくら
になるか、計算はしなかったが、物語の舞台のアルゼンチン
だけで3万人、他にコンゴで9万人などと書かれていたよう
に見えた。                      
映画の中では、アウシュヴィッツからの生還者のユダヤ人老
夫婦が出てきたり、軍政内にハーケンクロイツの腕章を付け
た男たちが居たりと、ちょっとやりすぎの感じのする描写も
あったが、全体的に告発したいことは分かり易い。    
主人公の持つ能力も、荒唐無稽かも知れないが、描きたいこ
との本質を描く意味では有効な手段だったように思った。 
なお、ここに描かれた失踪者に関しては、今もアルゼンチン
政府はその全ての事実は認めていないようだ。そして現在の
政治家のやり方を見ていると、日本もいつこうならないとは
言い切れない感じがした。               
                           
『ロード88』                    
映画の最後に骨髄バンクのドナー登録を訴えるテロップが表
示される。今も故夏目雅子さんが登場するテレビCMが流さ
れているが、この映画もその主旨に乗って作られた作品。 
2003年秋、骨髄性白血病と闘う少女が、徳島から、高知、愛
媛、香川へと巡る四国88ヶ所の遍路に挑む。日活や独立系の
成人映画を多く手掛けてきた中村幻児監督作品。     
監督はこの映画の実現のため、出資者の募集などに数年を費
やしたということだが、何が彼をそのような衝動に駆り立て
たかは明らかにされていない。しかし彼の思いが作品の隅々
まで横溢する、そんな感じの作品だった。        
難病の少女を囲む、過去の栄光にしがみつく落ちぶれた芸人
と、彼を再起させようとする製作プロダクションスタッフ、
そして犯罪に手を染めているらしい中年の男。こんな書いて
いても気恥ずかしくなるような人物設定を、いけしゃあしゃ
あと登場させる製作態度が、見事に映画を成功させてしまっ
ている。                       
重いテーマを、極力明るく、そして一種のメルヘンにして描
き上げる。そんな製作のコンセプトは容易に読み取れる。だ
から上述のような強引な人物設定も許されるし、御都合主義
満載の展開も許される。しかし、監督はそこに単純に甘えて
はいない、これらの設定や展開が破綻のないように丹念に描

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07月14日(水)
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