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On the Production
by 井口健二
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■イブラヒムおじさんとコーランの花たち、トロイ、ヒロイック・デュオ、トスカーナの休日、カーサ・エスペランサ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』       
      “Monsieur Ibrahim et les Fleurs du Coran”
オマー・シャリフが、2003年のヴェネチア映画祭で特別功労
賞を受賞した作品。                  
1960年代のパリの裏町を舞台に、街娼の居並ぶその町に住み
家族の愛情を知らずに育ったユダヤ人の少年と、トルコから
の移民でやはり家族を持たないイスラム教徒の老人の交流を
描いた物語。                     
ユダヤ人とイスラム教徒。今の時代では、それだけでいろい
ろな考えが浮かんでしまう組み合わせだが、1960年代の彼ら
は何の屈託もなく、互いに信頼の置ける関係として物語は進
んで行く。                      
主人公の少年モモは、13歳の誕生日に16歳と偽り、長年貯め
た貯金箱の金で街娼を買う。そんな彼を、日曜日にも朝8時
から夜12時まで店を開けていることからアラブ人と呼ばれて
いる老人は、いつも優しい眼差しで見守っている。    
しかし老人は、トルコからアラビア半島までを指す三日月地
帯の出身で、コーランを読むイスラム教徒と名乗るが、戒律
主義を否定するスーフィーだから飲酒も厭わないと言う。そ
して本当は別のユダヤ人の名前を持つ少年を、親しみを込め
てモモと呼ぶ。                    
一方、少年は、割礼をしているイスラム教徒の老人に、ユダ
ヤ人と同じだとして、親しみを持つ。そんな2人の交流の始
まりから、互いの信頼を築いて行く姿が描かれる。    
1999年の『13ウォリアーズ』以降、一度は引退を考えていた
シャリフは、この作品に出会い、映画界への復帰を決めたそ
うだ。現代の、互いの信頼が失われ、それを再構築しようと
さえしない時代に、この映画は大きなメッセージを伝えてく
れる。                        
                           
『トロイ』“Troy”                  
ブラッド・ピットが演じるアキレス、オーランド・ブルーム
のパリス、エリック・バナのヘクトル、そして、監督ウォル
フガング・ペーターゼンが繰り広げるホメロスの叙事詩「イ
リアス」にインスパイアされた歴史絵巻。        
トロイの王子パリスによるスパルタの王妃ヘレン誘拐に端を
発し、トロイとギリシャ軍との間で10年に渡って戦われたト
ロイ戦争。その戦いの全貌が、CGIなどの最新の映画技術
を駆使して再現される。                
CGIで描いた戦いというと、最近では“The Lord of the
Rings”が比較の対象になるが、魔物も登場するLOTRに比べ
るとスケールや多彩さでは一歩譲るものの、肉弾合い打つと
いうリアルさでは、本作は迫力満点に描かれている。   
元々の物語は、ヘラ、アテナ、アフロディテの3女神による
美の競い合いに始まり、アキレスやオデッセウスなどの神話
の人物も巻き込んで展開するが、今回の映画化では、一応ア
キレスは神の血を引くとされているものの、全体は人間ドラ
マとして描かれている。                
従ってトロイ戦争もかなりリアルな描き方で、登場する武器
は弓矢と剣、槍や矛と行った普通のものばかり、そしてこれ
らを力任せに打ち合うという戦い方なのだから、まさに古代
の戦いが再現されているという感じだった。       
ただし、その中でアキレスだけは特別で、人物としては人間
臭く描かれているものの、戦いぶりは身軽さを強調した殺陣
が見事に決まっていた。実際この部分はVFXを使って描か
れている訳だが、リアルとノンリアルが見事に交錯してその

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05月14日(金)
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