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On the Production
by 井口健二
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■ウォルター少年と…、風の痛み、バレエ・カンパニー、ワイルド・レンジ、花咲ける騎士団、シュレック2、セイブ・ザ・W、機関車先生
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『ウォルター少年と夏の休日』“Secondhand Lions”
ハーレイ・ジョエル・オスメントとマイクル・ケイン、ロバ
ート・デュヴォルが共演した不良老年と少年の成長ドラマ。
オスメント扮するウォルター少年は、無責任な母親によって
夏休みの2カ月を2人の大叔父と一緒に過ごすことになる。
大叔父たちは、40年近く行方不明だった後に突然帰ってきた
ものだが、なぜか大金を隠しているという噂がある。そして
少年には、その金の隠し場所を探ることも命じられている。
こうして、お互いつき合い方の判らない少年と老人たちは、
ぎくしゃくした生活を始めるのだが…。そんな中、少年は古
い旅行トランクの底に、乾いた砂に埋もれて隠された女性の
写真を発見する。そして老人たちは少しずつ昔話を始める。
それは驚異に満ちた一大冒険物語だった。
老人の思い出話と現実が交錯する展開は、先の『ビッグ・フ
ィッシュ』にも通じるところがあるが、『ビッグ…』がファ
ンタシーなのに対して、こちらはアドヴェンチャー。特に、
アラブ世界を背景にした外人部隊での活躍というのは、実に
微笑ましい。そしてこの2人の老人を、ひょうひょうとした
ケインと、無骨なデュヴォルが見事に演じている。
一方、オスメントは、撮影当時14,5歳のはずだが、今までの
子供っぽさから、少し青年らしさが出てきた感じで、良い味
を出すようになってきた。ただ前半、今までのイメージで幼
さを強調している辺りが、ちょっとやり過ぎにも感じるとこ
ろで、この辺りはもう少し年長の感じに演出しても良かった
のではないかと思った。
結局物語は、今なお破天荒な生活を続ける不良老人たちと、
少年との交流に移って行くのだが、その中ではオスメントと
ケインが、ディヴォルを見守っている雰囲気が実に良く、こ
の配役は見事としか言いようがない。そして、結末で見事に
カタルシスを感じさせてくれるところも素晴らしかった。
時代のせいか、最近、元気の良い老人の話が多くなってきて
いるようにも感じるが、その中で本編は、老人が老人である
ことを素直に描いたもので、見る方も素直な気持ちで見るこ
とのできる作品のように感じた。
『風の痛み』“Brucio nel vento”
ハンガリー出身でスイスに住む亡命作家アゴタ・クリストフ
の『昨日』という小説を、イタリアのシルヴィオ・ソルディ
ーニ監督が映画化した作品。
東欧の小国からスイスに亡命してきた男性と、異母妹の女性
との関係を描いた物語。この物語の本筋は、屈折した恋愛物
なのだが、その中には、亡命者ゆえの苦しみや彼らの生活の
現実が描かれている。
主人公は、東欧の小国のさらに小さな村で、娼婦の母親によ
って父親も知らぬまま成長した。しかしある日、父親が誰で
あるかを知り、その父親が教育援助と称して彼を寄宿学校に
入学させようとしたことから、その父親をナイフで刺して逃
亡する。
そしてスイスにやってきた主人公は、小説家になることを夢
見て言葉を覚えつつ、現実には時計工場の労働者として働き
ながら10数年が過ぎる。しかし今なお独身の彼は、幼いころ
に机を並べた異母妹の面影を追っていた。そしてその異母妹
が思わぬ形で彼の前に現れる。
せりふのほとんどは主人公の母国の言葉で、イタリアでの上
映時にも字幕付きで公開されたということだ。実際、配役に
はチェコ出身の俳優が起用されており、イタリア映画なのに
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04月30日(金)
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