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On the Production
by 井口健二
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■白いカラス、父と暮らせば、あなたにも書ける恋愛小説、ジャンプ、キル・ビルvol.2
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『白いカラス』“The Human Stain”           
『さよならコロンバス』の原作者フィリップ・ロスが2000年
に発表した小説の映画化。               
人種差別発言をしたために大学を追われた老教授と、家庭内
暴力に苦しむ34歳の女性との最後の恋を描いた物語。この老
教授をアンソニー・ホプキンスが演じ、女性をニコール・キ
ッドマンが演じている。                
原作を知る人には言わずもがなだろうが、老教授には人生を
賭けた秘密があり、その秘密を守り続けた人生が並行して描
かれる。原作にはもっといろいろな要素が描かれているよう
だが、映画はほぼこの1点に絞り込んで108分の作品に仕上
げている。                      
しかし、エド・ハリス扮する女性の夫のヴェトナム帰還兵の
後遺症の問題など、現代のアメリカが抱え続ける問題は明確
に描かれている。また人種差別発言の問題は、逆に言葉狩り
の問題としても捉えられ、見事な時代風刺にもなっている。
それにしても、ホプキンス、キッドマンの名演を余すところ
なく見せながら、テーマ性を失わず、しかもこの時間に納め
たのは見事としか言いようがない。3時間を超えても長くな
い映画もあるが、この作品はこの長さで充分に堪能できる。
ニコラス・メイヤーの脚色、ロバート・ベントンの監督、そ
してカナダ人の編集者クリストファー・テレフセンの見事な
仕事というところだろう。               
なお、作者の分身的存在の役でゲイリー・シニーズが共演。
普段は存在感がありすぎて、僕はいつも出しゃばり過ぎのよ
うな印象を受ける俳優だが、さすがに今回はホプキンスを前
に置いて、存分の演技を見せる。その嬉々とした感じも心地
よかった。                      
キッドマンはかなりの汚れ役ではあるが、先週『コールド・
マウンテン』で深窓の令嬢から徐々に変身して行く姿を見た
後には、ちょうど良い感じだ。これで体当たりの演技と言わ
れると彼女も面はゆいだろうが、ホプキンスとの絡みも良い
雰囲気だった。                    
                           
『父と暮らせば』                   
井上ひさしの舞台劇を、黒木和雄監督が映画化した作品。 
1948年夏、原爆投下から3年目の広島。主人公は、その廃虚
の町に一人で住む若い女性。その女性の前に、突然原爆で死
んだはずの父親が現れる。しかし彼女は動揺しない。それは
亡霊と言うよりは、彼女自身の心の代弁者のようでもある。
一方、図書館に勤める彼女の前に一人の青年が現れる。原爆
の資料を捜しに来たという青年は彼女に好意を持ち、彼女も
彼に引かれる。だが彼女には、原爆の惨禍を一人だけ生き延
びてしまった自分が、幸せになることへの後ろめたさがあっ
た。                         
基本的に外国映画を専門としている僕は、日本映画を見る機
会が少ない。黒木監督の作品を見るのも、多分、昔ATGで
『祭りの準備』を見て以来ではないかと思う。従って今回の
作品が3部作の完結編と言われても、僕は前の2作に言及す
ることはできない。                  
しかしこの作品が、単独でも素晴らしい作品だということは
間違いなく言えることだ。               
試写の前に監督の挨拶があり、そこでは映画化に至る経緯と
して、原作の舞台を見て感動したことと、映画化の許可を得
る際に原作者から、「舞台は見る人の数が限られるから、映
画化して世界中の人に見せてほしい」と励まされたことが紹

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04月14日(水)
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