ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460281hit]
■ラブ・アクチュア、タイムライン、デッドロック、ショコラーデ、レジェンド・オブ・メキシコ、N.Y.式ハッピー・セラピー、牙吉、コール
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ラブ・アクチュアリー』“love actually”
九つか十の恋愛物語が同時進行するアンサンブルドラマ。
アンサンブルドラマというと、最近作ではロバート・アルト
マン監督の『ゴスフォード・パーク』が話題になったが、一
応核になるストーリーのあったアルトマン作品に比べて、本
作は全くそういうものがなく、いくつもの物語が独立して見
事に進行する。
しかもそれぞれの物語は独立しているのだが、それらが着か
ず離れず微妙に連携しているところも見所で、全く関係ない
はずの人物がおやと思うようなところに登場したりする。そ
の辺りの組み立ても見事な作品だった。
そしてこのアンサンブルドラマを、エマ・トムプスン、アラ
ン・リックマン、ヒュー・グラント、キーラ・ライトレイ、
ローワン・アトキンスン、リーアム・ニースンという、本当
の意味で、今のイギリス映画を代表する人たちの共演で描く
のだからたまらない。
特にグラントのイギリス首相なんか、出てくるなり「有り得
ない」という感じなのだが、その首相が、ビリー・ボブ=ソ
ーントン扮するアメリカ大統領と対立して、とんでもない反
撃の演説をする辺りは、イギリス国民ならずとも喝采してし
まうところだ。
実際これだけの恋愛ドラマを描いた脚本の良さもあるだろう
が、これだけの物語を混乱を生じることなく手際よく並べて
みせた演出の手腕も素晴らしい。そしてこれらの物語のどこ
かに自分がいるような、そんな気持ちにさせてくれるところ
も素晴らしかった。
物語の最初と最後は、空港の到着ロビーの風景で、一般の人
たち(?)のいろいろな再会のドラマが写し出されるが、特
に最後は一体どれだけの時間撮影したのだと言いたくなるよ
うな見事なコラージュが美しい。
そしてその最後に、一瞬ハートが浮かび上がるところをお見
逃しないように。
『タイムライン』“Timeline”
マイクル・クライトンのベストセラーの映画化。
『アンドロメダ…』で『宇宙戦争』、『ジュラシック・パー
ク』で『失われた世界』、『ターミナルマン』で『フランケ
ンシュタイン』、『スフィア』で『チャレンジャー海淵』な
ど、様々のSF名作に挑んできたクライトンが、ついに『タ
イムマシン』に挑戦した作品。
と言ってもこの作品は、ウェルズのように遠い未来に行くの
ではなく、600年前の英仏百年戦争の時代が目的地になる。
そして、その地で行方不明になり、発掘中の遺跡を通じて救
援を求めてきた老考古学者の救出作戦が物語の中心だ。
まあ、正直に言ってクライトンという作家は、アイデアは面
白いがストーリーテリングは巧い方ではない。この作品も、
原作は読んでいないが、映画を見た限りでは展開がかなり荒
っぽいというか、よく言ってテンポが良過ぎる。
しかしこの荒い作品を、さすがにヴェテランのリチャード・
ドナー監督は見事にまとめ上げてみせる。特に、映画の後半
でフランス軍の総攻撃が始まった辺りからの畳み掛けるよう
な展開の巧さは、見事としか言いようのないものだ。
前半、登場人物たちの馬鹿さ加減にちょっと退き気味だった
僕も、後半になって映画にのめり込めた感じがした。特に結
末に至るというか、現代と過去を絡めた伏線の敷き方が、タ
イムパラドックスも含めて巧くできている感じがして、好ま
[5]続きを読む
12月02日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る