ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■第16回東京国際映画祭(前半)
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※このページでは、東京国際映画祭で上映された映画の中※
※から僕が気に入った作品のみを紹介します。     ※
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<コンペティション>                 
『カレンダー・ガールズ』“Calendar Girls”      
英国ヨークシャーの小さな村の婦人会で、慈善事業の資金集
めのために作った主婦たちのヌードカレンダーが、大反響を
巻き起こしたという実話に基づくヒューマンドラマ。   
元々は主婦仲間の一人の夫が白血病で亡くなり、その未亡人
の親友が、彼の残したメッセージに触発されて思い付くのだ
が、当然幹部会は大反対。それを掻い潜って撮影から発表に
漕ぎ着けるまでの顛末や、最後はアメリカにまで進出してし
まうお話などが描かれる。               
インスパイアと表記されているので、多分ほとんどの部分は
フィクションなのかも知れないが、実に人情味とユーモアに
あふれた物語で、しかもこれをへレン・ミレンを始めとする
ベテラン女優たちが見事に演じるのだから、それは素晴らし
い作品に仕上がっている。               
一つ一つのエピソードの積み上げ方も見事だし、主婦たちが
ヌードに挑戦する過程も自然に納得できる。また実現するま
での努力や、それによってちょっとしたことからお互いの間
に生まれる確執なども上手くドラマになっている。    
イギリス映画だが、すでにブエナヴィスタ(ディズニー)の
手でアメリカ配給も決まっている作品、それだけのことはあ
るという感じだった。                 
                           
『オーメン』(タイ映画)               
オキサイド&ダニー・パン兄弟が、製作、脚本、編集を手掛
けた作品。兄弟の作品は以前の映画祭の上映などで何本か見
ているが、今回の作品は兄弟の支援を受けて新人監督がデビ
ューを飾ったものだ。                 
物語は、幼なじみで成長しても一緒に広告業界で働く3人の
若者が、不思議な体験をして行くという、ちょっとオカルト
気味のお話。パン兄弟の作品もその傾向があるが、タイとい
うお国柄のせいか、因果応報といった感じのお話はそれなり
に様になっている。                  
3人の内の一人がちょっとした自動車事故の後で、謎めいた
老婆に巡り会う。そして彼女にいろいろ予言されるが、半信
半疑の彼はその言葉に従えない。しかしそれが徐々に仲間の
別の一人の生死に関わってくる辺りから、緊迫の度を増して
くる。                        
全体として良いお話なので、それはそれで構わないのだが、
ただちょっと結論と言うか、最後の部分が急ぎすぎていて、
一部釈然としない感じが残った。それがオカルトと言われれ
ばそれまでだが。                   
                           
『謎の薬剤師』“Le Pharmacien de Garde”       
世界中で続く環境破壊に、過激な方法で一人立ち向かった薬
剤師と、そうとは知らず彼の友人となった殺人課刑事を巡る
物語。                        
最初は、海洋汚染を引き起こした海運業者が、突然できた石
油溜まりで溺死体で発見される。次いで煙草会社の社長が、
数十本の煙草をくわえて肺の火傷で死亡する。      
この事件を追う刑事は、現場に残された印からドルイド教の
一派の仕業と割り出すが、それは過去のお話のはずだった。
娯楽作品としての完成度はかなり高い。薬剤師に超能力の雰
囲気を匂わせる辺りも巧みだし、薬剤師と刑事との関わりの
付け方もスムースに上手く描かれている。演出も良いが、脚
本もまた巧みな作りで面白い。             

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11月05日(水)
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