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On the Production
by 井口健二
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■東京ゴッドファーザーズ、ロイヤル・セブンティーン、かげろう、チャーリーと14人のキッズ、1980、ピニェロ、リクルート
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※
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『東京ゴッドファーザーズ』
『千年女優』などの今敏監督の第3作。
実写では映像化の難しいSFやファンタシーのアニメーショ
ンは理解できるが、普通の現代劇のアニメーションなんて、
実写で描けるものだし、あまり意味が無いと思っていた。し
かしこの作品では、なるほどこの感覚はアニメーションでな
くては得られないという感じがした。
クリスマスイヴの夜、中年男と、オカマと家出少女の3人の
ホームレスが、ごみ捨て場に置かれた赤ん坊を発見する。天
から授かった喜ぶオカマは警察に届けることを拒否、結局3
人で親を捜すことにするが…、手掛かりは数枚の写真だけ。
そして雪の降り頻る東京で、3人の活躍が始まる。
恐らくリアルに描けば嫌みになるし、汚らしくなる。そこを
アニメーションという手段で見事にオブラートにくるみ、物
語の本質に集中できるようにする。アニメーションにこんな
使い方があったのかという感じだ。
次々起こる奇跡のような出来事も、実写だとばかばかしくな
ってしまうところだろうが、アニメーションでそれを救って
いる。ソニーが世界配給も計画していということで、海外展
開も面白くなりそうだ。
『ロイヤル・セブンティーン』“What a Girl Want”
17歳のアメリカ人の少女が、イギリスの貴族家庭で騒動を巻
き起こすティーンコメディ。
主人公ダフネの母親は、17年前に北アフリカを旅行中、イギ
リス人との恋に落ちる。そしてベドウィン式の挙式の後イギ
リスに渡るが、伝統ある家柄を守ろうとする人々にその仲を
裂かれ、アメリカに帰国する。
その後に生まれたダフネは、毎年の誕生日に父親に会うこと
を願うが、その望みは叶わない。しかし17歳の年、彼女は単
身イギリスに向かい、父親に会うことを決意する。その父親
は下院選挙に出馬して次期首相を噂され、参謀の娘との婚約
も発表されていた。
ということで、ニューヨークのチャイナタウン育ちの少女が
イギリス貴族社会に旋風を巻き起こすのだが、まあ夢物語の
骨頂という感じ。最後はアメリカのスタイルが勝つというの
が、アメリカ人のお好みというところだろうが、貴族社会へ
の憧れみたいなものがそこここ見えるのも微笑ましい。
少女小説というのはどこの国でもあまり変わらないというと
ころだろうが、イギリス貴族社会の俗物性をちくちくとやる
辺りは結構笑えるし、選挙が絡むシチュエーションも結構描
いていて、ライトコメディとしてはよくできていると思う。
『かげろう』“Les Agares”
エマニュエル・ベアールの主演、アンドレ・テシネの監督で
描く、第2次世界大戦を背景にしたドラマ。
戦争の早期に夫を戦場で亡くした主人公は、子供2人とパリ
を離れ南仏に向かっている。しかし爆撃で乗ってきた車は炎
上、逃れた一家は不思議な青年の導きで森の中の屋敷に逃げ
込む。そこは戦火から遠く離れた楽園のような場所だった。
そこで一家と青年の微妙な共同生活が始まるが、謎に包まれ
た青年の行動に一家の生活は翻弄される。何か起きそうで何
も起きない、しかしいつも異様な緊張感に包まれている。戦
争という背景が見事にドラマを作り上げて行く。
95年のシラク大統領発言によって、フランス・ヴィシー政権
によるナチス協力が公式に認められてから、ヨーロッパでの
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10月03日(金)
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