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On the Production
by 井口健二
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■風をつかまえた少年、ジョナサン(暁闇、トールキン旅のはじまり、JKエレジー、グッド・ヴァイブレーションズ)、「フランス映画祭2019」
戦っている。その姿に息子は、父親が今も名前を口にする女
性の許を訪れるが…。
出演は1930年生まれのジャン=ルイ・トランティニアンと、
1932年生まれのアヌーク・エーメ。そして66年作品で2人の
それぞれの息子と娘を演じたアントニー・サイアとスアド・
アミドゥが同じ役柄で再登場。
他にモニカ・ベルッチ、1991年『美しき諍い女』などのマリ
アンヌ・ドニクールらが脇を固めている。
90分の映画には66年作のシーンもふんだんに登場し、さらに
ルルーシュ監督が1976年に発表した9分間の作品“C'était
un rendez-vous”がほぼ全編登場して、1937年生まれの監督
の正に集大成といった感じに仕上げられている。
なお本作は日本配給が決定して2020年に公開されそうだ。

『シノニムズ』“SYNONYMES”
2018年のベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた作品。
題名は「同義語」「類義語」という意味のようだが、映画の
見た目では「同じ穴の狢」といった感じかな。パリにやって
きたイスラエル出身の男性が、アイデンティティを得て行く
姿が描かれる。
脚本と監督は実際にイスラエル出身のナダヴ・ラピドによる
ものだが、何というか主人公の尊大とも言える感じの態度が
観ていて気になる作品だった。多分これは監督自身が行って
いることでもあるのだろうが、状況が不明の日本人の目から
すると、イヤミな感じにも映るものだ。
イスラエル=ユダヤ人というとシオニズム(Zionism)という
言葉も頭に浮かんで来るが、本作の題名と語感が似ているの
も気になった。本作はフランス=イスラエルの合作なので、
どちらかを揶揄した作品ではないのだろうが、勉強不足の自
分には理解の難しい作品だった。
まあフランス人もドイツ人もユダヤ人に対しては後ろめたい
ものがあるから、このような作品で自らを見つめ直している
のかもしれないが。

『マイ・レボリューション』
      “Tout ce qu'il me reste de la révolution”
2014年『ウィークエンドはパリで』などの女優ジュディス・
デイヴィスが、自らの脚本、主演で初監督に挑んだ作品。
主人公は共産主義の両親の許で育った30代の都市計画プラン
ナー。しかし勤務先の設計事務所を人員整理で馘になり、老
害とも言える経営者への不満を爆発させる。そして年老いた
父親や、中産階級に嫁いだ姉へも不満をぶつけるが…。
家族を置いたまま出て行ったとされる母親から、姉を通じて
会いたいというメッセージが届き、全てに行き詰った主人公
は母親との再会に活路を期待する。
主人公の感じている不満は、多分現代人の誰しもが感じてい
るもので、その点では共感もする作品だが。その不満をただ
やみくもに述べ立てられると、さすがに辟易する。特に本作
では、長台詞の多用がその気分を倍加させる。
それが狙いというなら成功とも言えるが、観客の気分を害し
続けることは得策には思えない。私憤を公憤にすり替えるの
演説で共感を得るテクニックだが、本作はその逆でこれを個
性としてよいのだろうか?

 なお「フランス映画祭2019」では、上記の他に2018年東京
国際映画祭でグランプリ受賞『アマンダと僕』、2019年4月
題名紹介『ゴールデン・リバー』、2019年5月紹介『ディリ
リとパリの時間旅行』など、全16作品の上映が予定されてい
る。

06月09日(日)
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