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On the Production
by 井口健二
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■シャンボンの背中、Miss ZOMBIE、あの日見た花…、ある愛へと続く旅、009-1、スクールガール…、ランナウェイ、許されざる者
が最愛の娘を置いて逃亡したことに疑問を持ち、30年前の強
盗事件にも不審な点があることに気付く。こうして30年間秘
密にされていた事件の真相が暴かれて行くが…
共演は、主婦役にスーザン・サランドン、記者役にシャイア
・ラブーフ、さらに弁護士の娘役には、2010年にわずか10歳
でテレビの公開オーディション番組を勝ち抜いてレコード会
社と契約、デビューミニアルバムが100万枚突破を記録した
というジャッキー・エヴァンコが扮している。
その他、ジュリー・クリスティ、ニック・ノルティ、クリス
・クーパー、テレンス・ハワード、リチャード・ジェンキン
ス、スタンリー・トゥッチ、アナ・ケンドリック、ブリット
・マーリング、サム・エリオット、ブレンダン・グリースン
といった錚々たる顔ぶれが脇を固めている。
学生運動から始まった過激派テロ組織というと、日本では連
合赤軍事件が思い浮かぶが、内部抗争で自滅した日本とは異
なり、アメリカではそれなりに成果のある運動を展開してい
たようだ。
因に本作では、実在した過激派運動組織“ウェザーマン”の
元幹部が映画公開のキャンペーンにも協力したとのことで、
内容的にも彼らの納得の行く作品のようだ。日本では反体制
=悪という風潮が強いが、アメリカではレッドフォードのよ
うな人がその姿を描いている点にも注目したい。
『許されざる者』
1992年に公開され、米アカデミー賞で作品賞、監督賞などを
受賞したクリント・イーストウッド監督・主演作を、2006年
6月紹介『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀作品賞、
最優秀監督賞を受賞した李相日監督が、明治初期の北海道を
舞台にリメイクした作品。
主人公は元幕府側の侍で、人斬り十兵衛と異名を取った男。
男は討伐軍に追われ蝦夷地まで逃走し、最後は多数の敵を倒
して森の奥に姿を消した。それから10年後、十兵衛は北海道
の原野で幼い2人の子供とひっそりと暮らしていた。
そんな十兵衛の許に、元は幕府の侍として共に戦った男が訪
ねてくる。その男は十兵衛の腕を見込んで賞金稼ぎに誘い出
そうとするのだが、十兵衛は亡き妻との約束で人殺しはしな
いと誘いを断るのだが…。
その年は飢饉で食べ物も乏しく、已む無く十兵衛は賞金稼ぎ
の旅に出ることを決心する。しかしそこには思いも掛けない
運命が待ち受けていた。ということで、主人公の背景などを
除けばほぼオリジナルと同じ話が展開される。
正直に言ってリメイクの情報を聞いたときには、何を今更と
思った作品で、これを日本を舞台にしたからといって、何か
が変るとはとても思えなかった。実際に物語はほとんどオリ
ジナルの通りだ。
ところがこの作品では、明治初期の北海道を舞台にすること
で主人公の背景を明確にし、さらにアイヌとの関りなど、実
に巧みに物語が再構築されていた。これは少なくとも日本人
にはオリジナルよりドラマが明確になっている。
そして物語は、オリジナルより重厚、且つ感動的に繰り広げ
られていた。
出演は、渡辺謙、佐藤浩市、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里。
他に、小池栄子、國村隼、小澤征悦、三浦貴大、滝藤賢一、
近藤芳正らが脇を固めている。
一国が舞台の作品を他国でリメイクする際には、如何に物語
をその国の風土に合わせるかが重要になるが、本作ほどそれ
がうまく行っている作品も少ないだろう。その点で本作はオ
リジナルを超えたともいえる作品だ。
08月10日(土)
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