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On the Production
by 井口健二
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■悪魔のいけにえ、ウォーム・ボディーズ、ダークスカイズ、ハートの問題、タイム スクープ ハンター、樹海のふたり、歌藝、ジンジャーの朝
して「歌う前には心を静かにして、神様の前に出るような気
持ちで歌っています。ですから…」との説明があり、その言
葉の真意が初めて判ったものだ。
そして後半には、1994年(平成6年)の「芸能生活55周年記
念歌舞伎座リサイタル」の模様が収められている。
ここでは前半で聞けなかった「東京五輪音頭」が登場する他
には、「俵星玄蕃」を別として前半に重複しない曲が選ばれ
ているが、中ではこの年発表で日本レコード大賞企画賞を受
賞した「平家物語」が全曲聞けるのも貴重なものだ。
またその前には、「平家物語」に関連するインタヴューが挿
入されて、そこでは舞台と違った三波氏の顔も見られる。実
はそのインタヴューが江古田の建物の中で行われているよう
で、夜間で見辛いが背景の窓の外には他の建物も見えて、そ
れも僕には懐かしかった。
三波氏は、国民歌手と呼ばれる存在だったが、「忠臣蔵」や
「平家物語」のような作品は、まさに日本文化の根源とも言
えるもので、それをその後の歌手が誰も引き継いでいないの
は、不思議なところだ。
公開は6月22日に東京は新宿バルト9、日比谷みゆき座他で
開始され、その後は全国順次公開される予定になっている。
オリジナルがNTSCで、走査線の粗さやクロスカラーなど
も生じるが、それも歴史を感じさせた。

『ジンジャーの朝』“Ginger & Rosa”
2005年7月紹介『愛をつづる詩』などのサリー・ポッター監
督の最新作。
背景は1960年代のロンドン。1945年の同じ日に生まれて以来
一緒に育ってきたジンジャーとローザという2人の少女の青
春が描かれる。
ビートルズもヌーヴェルヴァーグも誕生していないその頃の
若者にとって、最大の関心事は冷戦さなかの世界情勢。ソ連
が核ミサイルを開発し、キューバ危機が起き、街中では反核
デモが行われている。
そんな社会に影響される2人もまた、ファッションや煙草や
飲酒といった大人の世界に関心を寄せて行くが、どちらかと
いうと行動派のローザに対して、慎重派のジンジャーには躊
躇うことも多かった。
そんな中で父のいないローザは、思想家でもあるジンジャー
の父親に惹かれ、その思いは恋愛へと膨らんで行く。そして
2人の関係が明らかになったとき、2人の違いは決定的なも
のになってしまう。
主人公の2にを演じるのは、2011年6月紹介『スーパー8』
などのエル・ファニングと、2010年4月紹介『ブライト・ス
ター』などのジェーン・カンピオン監督の娘のアリス・イン
グラード。アリスは本作は本格デビュー作となる。
他に、2009年7月紹介『ココ・アヴァン・シャネル』などの
アレッサンドロ・ニヴォラ、2010年12月紹介『かぞくはじめ
ました』のクリスティーナ・ヘンドリックス、2011年2月紹
介『キッズ・オールライト』のアネット・ベニング。
さらに『ハリー・ポッター』シリーズのティモシー・スポー
ル、今年3月紹介『ライジング・ドラゴン』などのオリヴァ
ー・プラット、2007年9月紹介『レンブラントの夜警』に出
ていたというジョディ・メイらが脇を固めている。
ポッター監督は1949年生まれ。実は僕も同い年だが、そんな
監督の目に映る少女たちは、ある種の憧れだったのかな。単
なるノスタルジーでもない、特には何とも言えない感覚が映
画の各シーンには感じられた。
そしてそれは、今の若者たちでは描くことができないものの
ようにも感じられた。

06月10日(月)
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