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On the Production
by 井口健二
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■汚れなき祈り、アンナ・カレーニナ、体温、愛アムール、暗闇から手をのばせ、カルテット!、ジャンゴ繋がれざる者、魔女と呼ばれた少女
ャラダイン。さらにはスタントウーマンのゾイー・ベル、メ
イクアップアーチストのトム・サヴィーニらの名前も出演者
欄に登場し、錚々たる顔触れがタランティーノの新たな門出
に結集したようだ。
タランティーノは脚本も執筆して、それは米アカデミー賞の
候補にもなっているものだが、その展開は開幕の黒人奴隷の
行列に始まって、どこをとっても過去に観たようなシーンの
連続。
それは本人的にはオマージュののつもりだろうし、観客とし
ても微笑ましく思うようなものだが、折角のタランティーノ
ならもう1歩踏み込んでも欲しかった感じもしてしまうとこ
ろだった。
その辺にはこちらの期待過多なのかもしれないが、ちょっと
物足りなくも感じてしまったところだ。でもまあ、これが彼
にとっては西部劇は第1作なのだし、これから作られる作品
には大いに期待したいものだ。
『魔女と呼ばれた少女』“Rebelle”
カナダのフランス語圏ケベック州の製作で、今年の米アカデ
ミー賞外国語映画部門で候補になっている作品。
映画の舞台は、アフリカ中央部のコンゴ民主共和国。2003年
の合意による暫定政権の成立以後も、内戦状態が続いている
とされるこの国で、軍事勢力に翻弄されながらも生き抜いて
行く1人の少女の姿が描かれる。
その少女は、12歳の時に暮らしていた村が反政府軍の侵攻を
受け、拉致された少女は反政府軍の兵士として徴用される。
しかし幻覚作用のある樹液を飲むことで亡霊が見え、亡霊の
導きで勝利を招くようになる。
このためボスからも「魔女」と崇められるようになるが、亡
霊のお告げで死を予知した少女は、彼女に想いを寄せる少年
と2人で逃亡する。そして少年のプロポーズに対しては、父
親に教えられた「白いニワトリ」を要求するが…
亡霊の登場などには、かなりファンタスティックなイメージ
も描かれてはいるが、全体としては生と死が隣り合わせのア
フリカの大地に生きる少女の厳しい現実が描き尽くされてい
る作品だ。
その現実は、不況で将来に希望が見えないと言いながらも、
安寧な日本の少年少女たちには想像もつかないものだろう。
しかしこれが世界の現実であり、多くの子供たちがそんな環
境の中で生きていることは知っておいて欲しいものだ。
出演は、本作でベルリン国際映画祭の主演女優賞「銀熊賞」
を獲得したラシェル・ムワンザを始め、彼女と共にバンクー
バー批評家協会賞で助演男優賞を受賞したセルジュ・カニン
ダら、現地のオーディションで選ばれたコンゴの人々。
その脇を、アラン・バスティアン、ラルフ・プロスペール、
ミジンガ・グウィンザという3人のカナダ人の俳優たちが固
めている。脚本と監督は、ベトナム人を父親に持つキム・グ
エン。因に本作は監督4作目の作品だそうだ。
撮影は、2011年6月にオール現地ロケで行われ、まだ内戦状
態が続く現地では、武装した市民軍に守られての撮影だった
そうだ。また途中に登場するアルビノの村は、実はアンゴラ
で撮影されたものだそうだが、その現実もかなり厳しいもの
のようだ。
映画の内容では、2011年8月紹介『ゴモラ』に重なるところ
もあり、僕個人の感想としてはもう少しファンタシーに寄っ
てくれても良かったかなとも思ったが、現実を真っ向から捉
えるということではこの方が良いのだろうし、この現実をで
きるだけ多くの人に知ってもらいたいものだ。
01月30日(水)
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