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On the Production
by 井口健二
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■奪命金、ホビット、王になった男、キャビン、ブレイキング・ドーン、クラウド・アトラス、レ・ミゼラブル、ライフ・オブ・パイ
レッドメイン、BBCのスカウト番組で発見され、ロンドン
の舞台でも同じ役を演じたサマンサ・パークス、ブロードウ
ェイで『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のミュージ
カル版に主演しているアーロン・ドヴェイトらが脇を固めて
いる。
なお作品は、普通の台詞が全くないオペラスタイルの構成だ
が、撮影では全出演者の歌唱の音声も同時録音されており、
正に実演の迫力で演じられている。因にジャックマンは本来
がトニー賞受賞のミュージカル俳優だし、クロウも以前には
CDを出したこともあるミュージシャンだ。
その他、見事に再現された19世紀のパリの景観なども楽しめ
る作品になっていた。

『ライフ・オブ・パイ』“Life of Pi”
2005年『ブローバック・マウンテン』でオスカー監督賞に輝
いたアン・リー監督が、少年とベンガルトラによる227日間
の漂流記を描いた3D作品。
少年の名前はパイ。物語はその名前の由来から始まる。その
少年は、動物園を経営する父親と家族と共にインドで暮らし
ていたが、園の経営に行き詰まった父親は動物をアメリカの
動物園に売却することにし、その金でカナダへ移住する一家
は、動物たちと共に日本船籍の貨物船に乗船する。
ところがその船が太平洋上で嵐の遭遇して沈没。少年は家族
を失って唯1人救命ボートに残されるが、そこには脚を骨折
したシマウマとオレンジという名のオランウータン、それに
リチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラも同乗し
ていた。
1日5キロの肉を必要とするベンガルトラと少年との究極の
サヴァイヴァル。小さなボートでの住み分けや食料の入手。
それはやがて彼らを幻想的な冒険にも誘って行く。果たして
それは真実の物語なのだろうか。そんな物語が取材に訪れた
作家の前で語られる。
お話はもちろんフィクションだが、そこには地球上の生物と
の共生など、様々なテーマが語られているようだ。そしてそ
んな物語が、素晴らしい3Dの映像の中で描かれている。
出演は、本作でアン・リー監督に見出されたスラージ・シャ
ルマ。デリー郊外で両親と共に暮らす当時17歳の少年は、そ
れまでに演技経験はなかったそうだ。
他に2007年10月紹介『その名にちなんで』などのイルファン
・カーンとタブー。さらに今年10月紹介『もうひとりのシェ
イクスピア』などのレイフ・スポールらが脇を固めている。
またフランスの名優ジェラール・ドパルデューも登場する。
2003年7月紹介『ハルク』は、僕には2008年版より好ましい
作品だ。その時のプロモーションで来日したアン・リー監督
が「モーション・キャプチャー用のスーツを自分で着て超人
ハルクの演技をした」と嬉しそうに語る姿は印象的で、その
監督が3Dに挑戦するというのは、当然にも思えた。
その作品は、まず最初の動物園のシーンから3Dが楽しくて
仕方がないというような映像で、その後の様々なシーンでも
正しく3Dが堪能できる映像が満載のものになっている。そ
れは『アバター』ほど大げさではないけれど、いま地球上に
現実にありそうな風景が3Dで描かれている。
しかもそれが実に幻想的で、心が癒されるような映像になっ
ている。ベンガルトラとのサヴァイヴァルはリアルで、甘い
ものではないが、そこにもファンタシーが巧みに織り込まれ
る。そのバランスも素晴らしい作品だった。
なお本作は、前回紹介したアカデミー賞VFX部門の予備候
補の10本にも選ばれているものだ。

12月09日(日)
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