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On the Production
by 井口健二
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■シルク・ドゥ・ソレイユ、ボディ・ハント、カミハテ、宇宙人王さんとの遭遇、駆ける少年、ミロクローゼ、横道世之介、ダーケストアワー
彫りにして行く。
主演は高良健吾、吉高由里子。共演は池松壮亮、伊藤歩、綾
野剛。さらに朝倉あき、黒川芽以、柄本佑、佐津川愛美らの
若手と、井浦新、國村隼、堀内敬子、きたろう、余貴美子ら
のベテランが脇を固めている。
中で吉高、池松らは2つの時代のキャラクターを演じるが、
特に吉高の演じ分けは見事だった。それにその間を違和感な
く繋いでみせた脚本、演出も素晴らしいものだった。
でも何と言っても物凄いのは時代考証の完璧さ、それはプル
トップの缶飲料からブラウン管のテレビ、ウォークマンまで
様々に及ぶが、正しく監督たちのこだわりとも言いたくなる
もので、特に終盤の年代が特定されてからのフィルムのパッ
ケージには仰け反ってしまった。
そしてそんな完璧な背景の中で、僕自身もそうだったかもし
れない青春のページが描かれて行く。それは今では取り戻す
ことのできない、素晴らしい世界が思い出深く描かれている
ものだ。出来ることならこんな過去に戻りたくなった。

『ダーケストアワー・消滅』“The Darkest Hour”
今年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのティムール・
ベクマンベトフ監督が製作を担当し、7月紹介『プロメテウ
ス』を手掛けたジョン・スペイツの原案・脚本から、2005年
2月紹介『ブレイド3』などの美術担当クリス・ゴラックが
監督したモスクワが舞台のSF作品。
物語の中心は、自ら開発したコンピュータソフトの売り込み
にアメリカからやって来た2人の青年。ところが先回りした
スウェーデン人の男にしてやられ、2人は失意の酒を酌み交
わすことになる。
それでも居合わせた2人のアメリカ人女性旅行者とも親しく
なり、機嫌も治りかけたところで事件が勃発する。突然明か
りが消え、街路に出た彼らの目前に異様な無数の光が着陸。
その光は人間を粉砕し始めたのだ。
その場は辛くも逃げ出し、地下室に立てこもった彼らだった
が、数日を経て食料も尽き、外に出なくてはならなくなる。
そこで彼らが見たのは、人気のないモスクワの街だった。し
かし生き延びた人間は他にもいると確信する彼らは…
最近この手の宇宙からの侵略ものはよく見掛けるが、今回は
侵略者の設定などにも工夫があり、またマッドサイエンティ
ストなども巧みに配置されて、王道のSF作品という感じに
仕上げられている。
出演は、2008年5月紹介『イントゥ・ザ・ワイルド』などの
エミール・ハーシュ、名匠アンソニー・ミンゲラ監督の息子
で2010年10月紹介『ソーシャル・ネットワーク』などのマッ
クス・ミンゲラ。
他に、2011年2月紹介『抱きたいカンケイ』などのオリヴィ
ア・サールビー、2007年『トランスフォーマー』などのレイ
チェル・テイラー、そして来年公開“RoboCop”のリブート
で主人公を演じるジョエル・キナマンらが脇を固めている。
ロシア出身のベクマンベトフ監督には、母国への凱旋となる
作品だが、それでモスクワの街に破壊の限りを尽くすのだか
ら、それもニヤリとするところだ。なお撮影は、モスクワと
ベルリンで行われている。
そしてそのスタッフの中に、数多くのロシア名があるのは、
正に錦を飾っているという感じだ。こんな風に母国の仲間に
恩恵をもたらすことができるのも、嬉しいことだと感じさせ
る。ただ、背景のCGIなどに多少画質のバラツキがあるの
は…、これはご愛嬌ということにしておきたい。

10月07日(日)
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