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On the Production
by 井口健二
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■大恐竜時代、モンスター・ホテル、自縄自縛の私、ファースト・ポジション、アパートメント:143、長良川ド根性、ELEVATOR、4:44
が、このページでも2009年7月に堀部圭亮監督による『悪夢
のエレベーター』などを紹介している。いずれにしても、現
代では比較的思い付きやすい作品というところだろう。
しかし上記の日本映画が共にコメディ仕立てであったのに対
して、本作は多少のコメディ要素はあるものの全体はリアル
で、それなりにサスペンスも描かれた作品になっていた。
ただ、スマートホンで生中継するなどの今風の要素も描かれ
ている反面、それが外部でどういう状況なのかが判らないの
にはもどかしいものもあって、その辺で僕は今ひとつ映画に
乗り切れなかった。
どうせなら舞台の限定という設定に拘らず、もっとオープン
な作品にした方が良かったとも思えたものだ。それではソリ
ッドシチュエーションではなくなってしまうが。
『4:44地球最期の日』“4:44 Last Day on Earth”
地球規模の災害によってその日に人類が絶滅すると判明した
最期の半日間を描いた作品。
主人公は、ニューヨークのアパートに若いアーティストの女
性と暮らす中年男性。女性はアブストラクトな絵画を描き続
け、男性はそれを見たり、2人でセックスにふけったりする
普通の様子だが、実はその翌朝4時44分に地球のオゾン層
が破壊され、人類は即刻絶滅することが判明している。
そんな状況では、人々の中には自殺する者も現れるが、多く
は事態を冷静に受け止め、最後まで平穏な日常を続けようと
しているようだ。そして主人公も、最期の時まで彼女と一緒
に過ごそうと考えているが…。
ケータリングの中国料理を配達に来た東洋人の若者の姿など
が徐々に主人公の心に変化をもたらして行く。そしてそれは
彼女との関係にも影響して行く。果たして彼らは最期の時ま
で一緒に居られるのか?
脚本と監督は、2010年1月紹介『バッド・ルーテナント』の
1992年オリジナル版を手掛けたアベル・フェラーラ。
出演は、ウィレム・デフォー、2009年9月紹介『パブリック
・エネミーズ』などに出演し、監督のプライベートのパート
ナーでもあるシャニン・リー。他に2005年2月紹介『ブレイ
ド3』などに出演のナターシャ・リオン、1992年版『バッド
・ルーテナント』に出演のポール・ヒップらが脇を固めてい
る。
最後には多少のVFXもあるが、全体的には派手な映像もな
く、余りにも静かに最後を迎える人類の姿には、本当にこう
だったら良いなという監督の思いもありそうだ。因に映画の
中には、ダライ・ラマの映像なども挿入され、一方、アル・
ゴアの言葉も引用されるなど、それなりの思想的なものも描
かれている作品だ。
ただしそれはあざとい物ではなく、あくまで真摯に地球の現
状を憂いているような感じの作品でもあった。そしてその中
での人間ドラマには、男女の愛や家族愛など、様々な愛が見
事に描かれ、その素晴らしさが感動を呼ぶものにもなってい
た。
監督は1951年生まれ。本作は監督が60歳の時の作品だが、そ
の描き方には、老練さより止むに止まれぬ心情のようなもの
も感じられたものだ。
09月23日(日)
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