ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460114hit]

■フランス映画祭2012、農家の嫁/ちょっとエッチな生活体験/セカンドバージンの女、王様とボク、シャーク・ナイト、ただ君だけ、工事中
作品の時は多少物足りなくも感じられたものだが、本作では
それが良い方に作用している感じがした。
そのため本作は間違いなしの純愛ラヴストーリーなのだが、
そこに一本筋が通っている、そんなリアリティに溢れる作品
に仕上げられていた。しかも『街の灯』を実に巧みに現代の
ソウルを舞台に描いているものだ。
そして共演者の中で、主人公が闘う相手役には2006年ヘヴィ
級チャンピオンのウィ・スンペが登場し、またヒロインの同
僚役では実際に視覚障害を持つ俳優が出演してヒロインの演
技の手助けなどもしているそうだ。
他にカン・サンイル、パク・チョルミン、オ・クァンノク、
さらに韓国で「美しい中年」と呼ばれるチョ・ソンハが普段
とは違った役柄で共演している。
また撮影には、2009年8月紹介『母なる証明』などのホン・
クンピョ撮影監督とチェ・チョルス照明監督が参加。シーン
ごとに見事な映像を作りあげている。
その他に今年1月紹介『超能力者』などのクァク・ジェヨン
とファン・ヒョンギュンが特殊メイクを担当し、同じく『超
能力者』のチョン・ドアンが物語のキーとなるアクションの
VFXを担当して、物語のリアリティを高めている。

『工事中』“En construcción”
2010年5月紹介『シルビアのいる街で』などのスペインの名
匠ホセ・ルイス・ゲリン監督の作品8本を揃えた映画祭が、
6月30日より渋谷のシアターイメージフォーラムで開催され
ることになり、2001年製作の本作の試写が行われた。
作品は、バルセロナ郊外で進められる大規模再開発の様子を
数年に渡り記録したもので、その工事現場に隣接して暮らす
人々の生活や工事に携わる職人たちの仕事ぶり、さらに入居
してくる人たちの様子などが記録されている。
ゲリン監督のドキュメンタリー作品は、2009年10月20日付で
『イニスフリー』という作品を紹介しているが、本作もその
時と同じで何か監督の製作意図が掴み切れなかった。しかし
本作はゴヤ賞の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しており、
現地での評価は高いものだ。
それでの評価の理由を考えてみると、恐らくは工事の記録に
託けて人々の日常が描かれている点に注目ができそうで、そ
の点では確かに巧みに作られている感じがした。ただし、以
前の紹介作と同じく老人の繰り言が続くのは多少退いてしま
ったが。
その他、若い兵士と娼婦のシーンなどはヤラセを疑うが、こ
こでは社会的な問題などを感じるべきなのだろう。しかし全
体的にその映像の意図などは僕には掴み切れなかった。もち
ろん社会格差などが問題の根底に在ることは理解するが。
なお映画祭では、1983年の監督長編処女作『ベルタのモチー
フ』、1997年『影の列車』、2007年『シルビアのいる街で』
の創作ノートともいえる同年『シルビアのいる街の写真』、
最新作の2010年『ゲスト』、2011年『メカス×ゲリン』も上
映される。
また映画祭に際してはゲリン監督が来日し、初日から3日間
は各作品の上映後に1回ずつ監督の解説トークも予定されて
いるようだ。その後は4週間に渡って各週4本ずつ週替りで
の上映が行われる。
因に、映画祭のチラシに掲載された蓮實重彦氏の文章による
と、ゲリン監督の作品は「映画のあるかないかの核心へと見
るものを誘い込む」のだそうだ。確かにその通りでそれには
僕も納得するところだ。

06月10日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る