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On the Production
by 井口健二
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■LONE CHALLENGER、岸部町奇談、カイウラニ、グスコーブドリ、希望のシグナル、バルーンリレー、アイアン・スカイ、The Lady+DS記者会見
したVFXはそれなりの見所にもなっており、パロディも楽
しめるなどSF映画ファンにはお勧めの作品と言えそうだ。
『The Ladyひき裂かれた愛』“The Lady”
ビルマ民主化のシンボル=アンサウン・スー・チー女史の姿
を描いたリュック・ベソッン監督作品。監督は数年前に「も
う監督はしない」と宣言していたが、この作品は自ら監督を
熱望したそうだ。
始まりは1947年、ビルマの首都ラングーンの川縁に建つ邸宅
で、幼いスー・チーは両親と共に健やかに暮らしていた。と
ころがある日、父親であり「ビルマ独立の父」とも呼ばれる
アウンサウン将軍が暗殺されたとの報が飛び込んでくる。
そして物語は1988年、アジア研究者であるイギリス人の夫と
2人の息子と共にロンドンで暮らすスーチーの許に、母親の
看病のため帰国して欲しいという手紙が届けられる。こうし
てビルマに戻ったスーチーが見たのは、軍事政権の圧制に喘
ぐ民衆の姿だった。
そして学生や学者らによる反政府運動の高まりの中で、英雄
を父に持つスーチーは、何時しか運動のシンボルに祭り上げ
られて行くが、それは今までが学者の家の専業主婦だった女
性を過酷な運命に導いて行く。
試写状の邦題を見たときには、「ひき裂かれた愛」って何だ
ろうと考えてしまった。しかし映画には、実はプロローグが
あってVFXも使われたそのシーンで、ああその話なのかと
思い至った。
そして物語は、夫婦愛と2007年までのビルマの政治情勢を表
裏一体にして、巧みに見事に展開されて行く。
脚本は、BBCなどでドキュメンタリーを手掛けてきたレベ
ッカ・フレイン。その脚本の映画化を、マレーシア生まれで
2008年7月紹介『ハムナプトラ3』などのミシェル・ヨーが
自らの主演で企画してベッソンに提案したものだそうだ。
それにしてもヨーが演じるスーチーは、顔立ちなどもそっく
りで、妻であり母親であり、そして今も闘いを続けている歴
史的な人物が、それは見事に演じられていた。
共演は、2011年12月紹介『戦火の馬』などのデイヴィッド・
シューリス。2009年5月紹介『縞模様のパジャマの少年』な
ど脇役での印象の強い俳優だが、今回は図らずも歴史的な人
物になって行く妻を支える夫の姿を見事に演じていた。
映画の字幕では、ビルマの国名がダブルコーテーションで囲
まれていたが、背景となる国際情勢なども織り込まれて、今
も続いているビルマの情勢が解かり易く描かれた作品だ。
* *
記者会見の報告を一つ。
19日公開『ダーク・シャドウ』に関してティム・バートン
とジョニー・デップの会見が行われた。そこで質問はできな
かったが、興味の湧く発言があったので紹介しておく。
まずは今回3Dにしなかった理由については、1970年代の
鮮やかな色彩とホラーのダークなイメージを描くのに、画面
の暗くなる3Dは適さないと判断したのだそうだ。
それと映画の内容に関連して、未来に甦るとしたらどのよ
うな時代に行きたいかと訊かれ、バートンが冥王星に住める
時代と答えたのに対して、デップは「“The Jetsons”の時
代が良いな。家族の役をやってみたい」と発言。ハナ=バー
ベラのアニメーションで、実写映画化の企画は現在頓挫した
ままだが、デップが出演を希望すれば一気に実現…の可能性
も期待したいものだ。
他にもいろいろあったが、それはまたの機会にしよう。
05月20日(日)
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