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On the Production
by 井口健二
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■道、シグナル、ザ・マペッツ、崖っぷちの男、だれもがクジラを愛してる、ヘソモリ、この空の花、ブレーキ
の事柄が語られる。
その中では、長崎の前に行われたファットマン型模擬爆弾の
投下に直撃され亡くなった一家の話や、河川敷の芝居でも再
現される空襲の模様などかなり凄惨な物語が、巧みな語り口
で判りやすく描かれている。
特に、4.5tを超える重量の模擬爆弾が、爆発しなくても直径
20mの穴を穿ち、そこを通りかかった一家に死をもたらした
という話は、現地では碑も建てられているようだが、一般の
人はほとんど知ることなかったものだ。
このように映画では、今まで我々が知ることもなかった様々
な戦争の悲劇が語られ、それは被害者面するものではなく、
しかししっかり後世に伝えるべきもののように感じられた。
因に模擬爆弾は全国に50発近く投下されているようだ。
出演は監督のお陰か、松雪泰子、高嶋政宏を始め、柄本明、
片岡鶴太郎、藤村志保、富司純子など枚挙に暇のないほどの
錚々たる顔触れが集まっている。その中で、一輪車世界大会
優勝者という新人の猪俣南が、役柄も良いが演技の新鮮さで
も目を引いた。

『ブレーキ』“Brake”
ふと目が覚めると、疾走する車のトランクに置かれた透明な
箱の中…という、究極の状況に陥った男の姿を描いたサスペ
ンス作品。
男が閉じ込められているのは、中で体が回せる程度の大きさ
の透明な箱。その目の前にはカウントダウンする電光計時が
あり、その表示が4分を刻むごとに彼の置かれたシチュエー
ションは変化するようだ。
そして箱の中にはCB無線機があり、最初は別の場所で同様
の状況に置かれている男と繋がり、バンドを替えると近くを
走行中らしいトラックの運転手に繋がる。さらに箱の中には
1枚の絵葉書があり、その裏には「情報をよこせ」と書かれ
ていた。
プレス資料にも2010年9月紹介『リミット』の題名が記され
ていたが、シチュエーションはかなり似通っている。ただし
先の作品に比べると危機感では多少緩い感じがする。しかし
手を変え品を変えの主人公を襲う仕掛けの多様さが、興味を
引く展開となる。
その物語の途中では、このシチュエーションにはちょっと辻
褄の合わない展開もあるのだが、それは多分結末への伏線と
いうことなのだろう。この伏線は最終的にそれなりの意味を
持つものだ。
出演は、2011年11月紹介『インモータルズ』などのスティー
ヴン・ドーフ。彼は本作の製作総指揮も務めている。
他には、テレビ『グレイズ・アナトミー』にレギュラー出演
中のカイラー・リー、2008年1月紹介『シスターズ』に出演
のJR・ボーン、2010年7月紹介『インセプション』などの
トム・べレンジャーらが脇を固めている。
脚本は、映画の編集部門出身のティモシー・マニヨン。脚本
では本作がデビュー作のようだ。監督は、最近ではテレビド
キュメンタリーを多く手掛けているが、1990年代に3本の劇
映画が記録されているゲイブ・トーレス。劇映画は久々のよ
うだ。
いかにも作られたシチュエーションでの展開には、名作『プ
リズナー』を連想させるところもあり、『リミット』ほどの
息苦しさはないから、これなら閉所恐怖症の人にも楽しんで
貰えるかな?

04月29日(日)
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