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On the Production
by 井口健二
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■相馬看花、モバイルハウス、オレンジと太陽、キリマンジャロ、ブラック・ブレッド、コラボ・モンスターズ、ブラックパワー、赫い髪
ャンによるコメンタリーが付けられていて、それが当時の状
況を正しく伝えていると思えない。大体ほとんどが1970年以
降の生まれで、当時を知るはずもない連中なのだ。
そんなコメンタリーが、当時の制作者の意図を歪めている可
能性も否定はできない。確かにブラックパワーを担うべき黒
人青年の多くがヴェトナム戦争に駆り出され、そこで麻薬漬
けにされてパワーが失われたというのは面白い論調だが…
それと映画の最後に出てくるブラックモスリムの話などは、
もっと丁寧に描かれてもいいのでは無いかとも感じられた。
この部分こそはその後の検証も必要だったようにも思えるも
のだ。
仮に当時番組として放送されたものが在るのならそのオリジ
ナルも観てみたい。因に本作の日本公開版の上映時間は92分
だが、スウェーデンでは100分で公開されたようだ。
『恋人たちは濡れた』
『赫い髪の女』
前回に続いて日活創立100周年の記念企画として上映される
往年の日活ロマンポルノ32本の中から今回は神代辰巳監督作
品2本の試写が行われた。
前回の2本は多少捻った感じの作品だったが、今回は正にロ
マンポルノと呼びたくなる男女の絡みが描かれた2本で、さ
すが神代監督作品という感じがした。とは言え多少の時代臭
さは感じられたが、それはノスタルジーという感じのもので
はなかった。
その前者は湊町の映画館を舞台にした1973年の作品で、その
町にふらりと訪れた男の素性を巡って男女が交錯して行く。
恐らくはかなり奔放になってきていた若者文化を背景に、も
しかすると今より大らかな性が描かれている。
それは、最近観られる性描写が男女の行為と言うより、ただ
の道具として扱われている感じを持つことが多いことから、
本作ではかえって純粋さが感じられるようにも思えたのかも
知れない。
出演は、中川梨絵、絵沢萠子、薊千露、大江徹、堀弘一。脚
本は神代と鴨田好史が書いている。
後者は1979年の作品で、中上健次が前年に発表した小説を原
作としている。物語は建設現場で働く男がふと現れた女性と
一緒に暮らすようになる。男は同僚に女をあてがったり、そ
の同僚の男は別の女と駆け落ちしたり、周囲ではいろいろこ
とが起きて行くが…
出演は、宮下順子、石橋蓮司、亜湖。他に、阿藤海らが共演
していた。
2作品は6年違いで制作されているが、前者と後者では男と
女の立場が逆になっている感じで、その辺は面白くも観られ
た。脚色は、2003年11月9日付「東京国際映画祭(後半)」
で紹介した『ヴァイブレータ』などの荒井晴彦が担当してい
る。
40年前には間違いなく新鮮だった作品も、さすがに色褪せた
感じは否めない。ただ内容的には今の時代にも通じるものと
思えるし、理解して観ることはできるのだが、如何せん背景
の風景などに時代臭があり過ぎなのだ。
ただしそれは、僕自身がその時代に生きていたせいなのかも
知れないもので、その辺が今の観客にどのように迎えられる
のか、その点にも興味が湧いてきた。
04月01日(日)
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