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On the Production
by 井口健二
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■はさみ、瞳は静かに、エリート・スクワッド、夢二、ピザボーイ、マシンガン・プリーチャー、アーサー・クリスマス、しあわせのパン
良さを描いているのは見事だ。
サンタクロースの話は何本も作られているし、その配達方法
もいろいろ描かれてきたが、アニメーションとは言え本作ほ
ど大規模なものは初めてかな。今年は7月に『イースターラ
ビットのキャンディ工場』も紹介したが、これが今の子供た
ちの納得の限界なのだろう。
脚本は、2007年4月紹介の大ヒットコメディ『ボラット:栄
光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』などの
ピーター・ベイナム。本作は完全にお子様向けだが、大人も
納得できる作品に仕上げられている。
監督は、そのベイナムとは長年のコラボレイターというサラ
・スミス。因にスミスは、英国BBCでコメディ番組などを
手掛けた後にアードマン社の長編開発のチーフとなり、そこ
で立上げた2本の内の本作で監督デビューとなったものだ。
なおエンディングに流れる「サンタが街にやってくる」は、
今年4月紹介したジャスティン・ビーバーが歌っている。

『しあわせのパン』
原田知世、大泉洋の主演で、都会の生活に疲れ北海道洞爺湖
畔に引っ越してきた夫婦を巡る物語。
夫婦は、トーヤ行きの路線バスが止まる月浦バス停のそばで
パンカフェを開いている。夫が石窯でパンを焼き、妻がその
パンにあったコーヒーや料理を作って客に提供する。そのカ
フェには四季を通じていろいろな客がやってくる。
夏に来たのは、彼氏との沖縄旅行をすっぽかされて北海道に
来てしまった東京のデパート店員の女性と、地元の北海道を
出て行くことのできない青年。2人はそのカフェで巡り合い
関係を近付けて行くが、彼女の帰京の日が迫ってくる。
秋に訪れたのは、カフェの前のバス停から学校に通う少女と
その父親。母親が出ていった後の2人暮らしの中で行き違っ
てしまった心は、カフェの温かい料理で再び通い合わせるこ
とができるのか…?
冬にやって来たのは老境の夫妻。関西で大地震にあい、生業
だった風呂屋は廃業に追い込まれ、娘も亡くしてしまった夫
妻には、もはや人生に見出す希望も夢もなかった。そして夫
妻は、2人が共通の人生を歩み始めた場所に戻ってきた。
という3つのエピソードが、「月とマーニ」という絵本をモ
ティーフにして北海道の大自然を背景に綴られて行く。
脚本と監督は、2009年5月紹介『刺青・匂ひ月のごとく』の
三島由紀子。前作のタイトルに月が登場し、本作のモティー
フにも月があるが、本作は主題歌にもなっている矢野顕子と
忌野清志郎のデュエット曲「ひとつだけ」にインスパイアさ
れたものだそうだ。
なお元々の経緯は、主演の大泉が所属する北海道のプロダク
ションが、「北海道の知られていない魅力を伝えたい」と企
画。三島に依頼をして、2006年2月紹介『シムソンズ』など
の製作会社と共に作り上げた作品だ。
共演は、夏の客に平岡祐太、森カンナ、秋の客に八木優希、
光石研、冬の客に渡辺美佐子、中村嘉葎雄。他に余貴美子、
あがた森魚、大橋のぞみ(ナレーション)、霧島れいからが
脇を固めている。
美味しそうなパンや料理もたくさん登場して、四季折々の北
海道の大自然も丁寧に写し出された作品になっている。

11月20日(日)
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