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On the Production
by 井口健二
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■ルルドの泉、人生はビギナーズ、インモータルズ、デビルズ・ダブル、UGLY、スイッチ、ウクレレ、ジョージ・ハリスン+Oscar/Animation
元々は1980年にジョン・レノンが亡くなった後の1990年代に
“The Beatles Anthology”と題された映像ドキュメントが
企画されていた頃、ジョージは自らのドキュメンタリーを作
ることを考えていたのだそうだ。
ところが2001年にジョージが死去。これで計画は一度は潰え
たが、彼の妻のオリヴィアが夫の遺志を継いで2005年に企画
を再開。1978年の『ラスト・ワルツ』など音楽ドキュメンタ
リーの実績もあるマーティン・スコセッシを監督に招請して
本作が制作された。
その内容は、ビートルズの誕生から1968年にジョージの名曲
While My Guitar Gently Weepsが完成されるまでを描くパー
ト1(1時間35分)と、ビートルズの解散以後を検証するパ
ート2(1時間55分)とで構成され、数々の名曲と共に彼の
生涯が描かれている。
そこには、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターは元よ
り、オノ・ヨーコ、映画監督のテリー・ギリアムからF1レ
ーサーのジャッキー・スチュアートまで、生前のジョージと
親交のあったあらゆる分野の人たちがインタヴューに答えて
いる。
因にギリアム監督は、1981年の『バンデッドQ』をジョージ
の資金援助で完成させているものだが、ジョージがそのため
に映画会社を設立するなど、その間の経緯には映画ファンと
しても興味深いものがあった。
また、ギタリストのエリック・クラプトンのインタヴューで
は、ジョージとの間でのかなりプライベートな部分にまで触
れており、それはさすが監督にスコセッシを招いた効果かと
も思わせたところだ。
そして作品では数々の名曲が誕生するまでの秘話や、その間
のビートルズのメムバーたちの確執なども、かなり赤裸々に
語られている。そこでは特にジョージの孤立感が手に取るよ
うに理解することができた。
しかし、そんな確執も乗り越えて音楽を追求したジョージの
人間としての素晴らしさを描くのが本作の主眼。それはもち
ろん未亡人が制作した作品だから当然ではあるが、それを考
慮してもジョージの素晴らしさが見事に表現されていた。
2部の合計で3時間30分はかなりの長尺だが、観ている間は
時間の経過も気にならなくなるほどの濃密な作品で、見終っ
て本当に堪能できたと言えるものだった。
* *
アカデミー賞の長編アニメーション部門の予備候補が発表
されたので報告しておく。リストはアルファベット順で、
“The Adventures of Tin Tin”“Alois Nebel”
“Alvin and the Chipmunks: Chipwrecked”
“Arthur Christmas”“Cars 2”“A Cat in Paris”
“Chico & Rita”“Gnomeo & Juliet”“Happy Feet Two”
“Hoodwinked Too! Hood vs. Evil”“Kung Fu Panda 2”
“Mars Needs Moms”“Puss in Boots”“Rango”“Rio”
“The Smurfs”“Winnie the Pooh”“Wrinkles”の18本。
多分この中から5本が最終候補となるものだが、下馬評は
“Tin Tin”“Rango”“Happy Feet”辺りが強そうだ。
その一方で、今年は日本作品が見当たらないのが気になっ
た。去年から今年に掛けて日本アニメは何本か観ている気が
するが、アメリカ公開が決まっていないと言うことか。チェ
コ作品などが並んでいるところでは多少寂しい感じがした。
11月06日(日)
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