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On the Production
by 井口健二
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■吉祥寺の朝日奈くん、CUT/カット、ウォーキング・デッド、月光ノ仮面、人喰猪、ミツコ感覚、宇宙人ポール、天皇ごっこ
めている。
脚本は、ペッグとフロストが実際にアメリカ西部を旅しなが
ら練り上げたもので、宇宙人以外のエピソードは彼らの実体
験に基づくそうだ。そして宇宙人に関るエピソードは、これ
は幾多のSF映画やアメリカ映画にオマージュを捧げたもの
になっている。
そこには、『宇宙大作戦』や『未知の遭遇』『E.T.』は基
より、『イージーライダー』などのUFOに関る作品が次々
登場してくるし、さらにヴァスケス・ロックスなどの有名な
スポットも撮影されているものだ。
さらに、巻頭に登場するコミコンのシーンはアルバカーキで
撮影されたフェイクだが、その撮影には本物のコミコンの関
係者や参加者たちが多数協力しているそうだ。
そして監督は、2007年“Superbad”などのグレッグ・モット
ーラ。セス・ローゲンの脚本でスマッシュヒットを記録した
コメディの名手が、『ホット・ファズ』などのエドガー・ラ
イトに替って起用され、その落ち着いた演出は本作の雰囲気
にピッタリだった。

『天皇ごっこ』
1959年生まれ、右翼と左翼の狭間を彷徨い、2005年に自死し
た反体制の活動家で作家の見沢知廉を検証したドキュメンタ
リー。2006年10月紹介『9.11-8.15 日本心中』の大浦信行監
督作品。
題名は、見沢が1994年に発表した小説に拠っているが、内容
的にはその小説自体を映画化したものではなく、生前に見沢
との親交のあった人たちへのインタヴューを中心に、見沢自
身の行動などを検証している。
その見沢の行動は、常に体制に大きな不満を抱き、その打破
を夢見ていたようだが、結局その夢は果たせず自死に至って
しまうものだ。そこには生前のアジテーションの録音も挿入
されているが、その絶望感はかなりひしひし感じ取れる。
しかしそれは2005年以前のものな訳で、今の時代に生きてい
たらさらにその絶望感は大きくなっていたかな? 逆にそこ
に至ったときにこそ、本来の彼自身が出現したであろうとも
思え、その点では残念な気持ちもしてしまうところだ。
僕自身は、1970年安保闘争の当時に大学生だったが、それは
1960年の条約締結から自動延長が決っていたもので、1970年
にはすでに挫折感で一杯だった。それは同年の三島事件で、
右翼陣営も同じ想いだったはずだ。
ところが僕より丁度10歳年下の見沢は、そんな中にも夢を追
い続けていられたようだ。そして三里塚闘争で左翼に失望し
た後は、三島の行動を慕って右翼となり、右翼として反体制
行動を進めて行くことになる。
大浦監督自身は、前作の時にも右翼なのか左翼なのか判らな
かったが、本作でもその姿勢は判然としない。しかしそれが
日本の社会思想そのもののようにも思え、その右翼と左翼が
ごちゃごちゃになってしまうところに、日本の反体制の迷い
があるようにも感じる。
その混沌こそが見沢知廉であり、それは結局、今の日本の社
会そのものであって、それが日本人の政治離れも招いてしま
っているのではないか。そんな迷いが見事に炙り出されてい
る感じの作品でもあった。

10月09日(日)
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