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On the Production
by 井口健二
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■女の河童、ちづる、ブリッツ、ハラがコレなんで、風にそよぐ草、モンスター上司、カリーナの林檎、アンダー・コントロール+Thin Man
写真は、冒頭に原子力発電所の巨大なサイロが写し出される
1979年アンドレ・タルコフスキー監督の『ストーカー』を思
い出させたが、これは偶然なのだろうか。
『アンダー・コントロール』“Unter Kontrolle”
2022年、原子力発電所の全面廃止を政策として決定している
ドイツの原発事情を取材したドキュメンタリー。
ナレーションは一切廃して、原子力発電所の内部の案内や、
意見交換、シミュレーション訓練などの安全対策の実態、さ
らにすでに廃炉された原子炉の解体や高レベル放射性廃棄物
の処理の問題など、いろいろな側面からの取材映像が提示さ
れる。
それは、すでに脱原発が国是となるくらいに関心の高いドイ
ツ人にとっては、いろいろな映像を観るだけでもそれなりの
理解も生じるのかも知れないものだが…。
マスコミは今だに御用学者の発言の垂れ流しで国民が惑わさ
れている日本では、果たしてこの映像だけで何が判るか。特
に取材された原子力発電所の名称と地名だけが紹介されるテ
ロップでは、逆に混乱だけが生まれてしまうようにも感じら
れた。
確かに扇情的に捲し立てるマイクル・モーア的なドキュメン
タリーに問題が多いことは事実だが、問題点を明白にして知
識のない人にも理解させるという目的ではその手法も有効な
もので、それに対する反対意見も述べやすい。
それに対して本作の場合は、確かに冷静な目で事実のみが提
示されてはいるが、それが何を意味しているのかが僕のよう
な無知な人間にはさっぱり理解できず、これでは反論も何も
できない感じがした。
プレス資料によると、製作者はこれを観て議論をして欲しい
ようなのだが…。我々一般の日本人の場合は、その議論の前
に写し出された映像の一つ一つを検証して、その意味を把握
するところから始めなくてはいけない感じもしたものだ。
ただ、日本では全く目隠しされている放射性廃棄物の問題が
取り上げられているのは理解できたものだが、日本での原発
の経済性の議論がこの点を全く無視して成立している現状か
らは、その期間の問題だけでなく経費などにももう少し言及
して欲しかった。
それにしても、営業されなかった原発がそのまま遊園地に転
用されているという風景は不思議なもので、特に巨大なサイ
ロの中に作られたアトラクションには感心した。
そう言えば、ジェームズ・キャメロンの1989年『アビス』の
製作では、1979年のスリーマイル島事故で建設中止になった
原発のサイロが撮影用のプールに転用されたものだが、あれ
はどうなったのだろう。
原発絡みの作品が続いたが、これを時流に乗っているだけで
終りにはしたくないもので、ここから日本人にはいろいろな
ことを真剣に考えて欲しいものだ。それこそがこれらの映画
の制作者たちの意図であるはずなのだから。
* *
最後に、ワーナーが進める“The Thin Man”のリメイクの
脚本にデイヴィッド・コープの起用が発表された。このリメ
イクの主演にはジョニー・デップが取り沙汰されていたが、
デップは『POTC/OST』の撮影中ロブ・マーシャルに
監督の打診をしたとのことで、このトリオで映画化がスター
トするようだ。
09月04日(日)
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