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On the Production
by 井口健二
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■沈黙の春…、夜明け…、LIFE IN A DAY、ウィンターズ・ボーン、地球にやさしい…、ラビット・ホラー、ホワイト、チェルノブイリ+Ranger
いる心臓疾患。それは心室間の隔壁に穴が開くなどの症状が
現れ、現地の医師の技術では手術不能とされて2〜5年の余
命しかないとされる。
その他に水頭症(これは現地の医師でも処置ができるが、費
用の問題などで放置されている)や、諸々の放射能の影響と
見られる障害の多発して様子がアメリカ人の女性ドキュメン
タリストの取材で明らかにされて行く。
今回最初に紹介した『沈黙の春を生きて』では、枯れ葉剤と
いうワンクッションが置かれていたが、本作はもろに10数年
後の東京の現実だろう。
実際に映画の中でも、住いが非汚染地区とされて補償も打ち
切られたという地区の住民の子供が障害に苦しんでいる様子
が出てくるが、福島でも避難区域の指定が次々解除されてい
る状況が見事に重なるものだ。
また映画の中では、情報がまったく公開されないという住民
の不満も聞かれたが、これも東京電力のやり方に酷似してい
る。チェルノブイリは共産国家の管理下だったが、東京電力
も保安院の指示で公開を怠っているのだから、これも同じよ
うに感じられる。
それにしても放射能障害を負った子供たちのかなり強烈な症
状の様子は、正視するのが辛くなるほどのものだが、それを
放置した政府の無策ぶりも恐ろしく、今後は日本で同じこと
が起こらないよう祈るしかない。
実際に、日本でなら医療処置の可能な症状もあるようだった
が、早く政府がその責任を明らかにして、的確な処置が行わ
れることを望みたいものだ。
なお後半は、原発の目と鼻の先に住んでいたという男性が、
20年ぶりに住いを訪れるというものだったが、「2度とここ
には戻ってこないだろう。ずっと住んでいたかった」という
独白が避難住民の心情を考えて辛いものだった。
(本作は昨日公開が始まっているが、試写替わりのDVDを
ようやく今日を観ることができたもので、内容に鑑みて敢え
て緊急で紹介することにした)
* *
製作ニュースは少し気になる情報で、6月12日付で紹介し
たばかりのゴア・ヴァビンスキー監督、ジョニー・デップ主
演による“The Lone Ranger”の計画からディズニーが手を
引くとの発表が行われた。
この計画では、前回の報告で2012年12月21日の全米公開日
も発表されていたものだが、最終的に2億5000万ドルに及ぶ
という製作費にディズニー側が躊躇してしまったものだ。そ
れはもちろん、『POTC』を作り上げた監督/主演のコン
ビに信用は置けるものではあったが、今回は主題に不安があ
るし、増してやデップがタイトルロールでないことも、懸念
材料ではあったようだ。
一方、ディズニーの2012年公開計画では、今年1月30日付
で紹介した“John Carter”(正式題名はこれだけになった)
や、5月29日付紹介“Oz, The Great and Powerful”などの
超大作がすでに製作中となっており、これらに加えての製作
は状況も厳しかったかもしれない。
ただ、今年になってから、スティーヴン・キングの原作を
映画化する“Dark Tower”が、ロン・ハワード監督の就任が
発表された直後に延期されたり、ギレルモ・デル=トロ監督
の“At the Mountains of Madness”も動き出したと報道さ
れた直後にキャンセルされるなど、大作映画を取り巻く状況
全体が厳しくなっているようだ。
08月14日(日)
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