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On the Production
by 井口健二
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■デュー・デート、Gソシアリスム、デッド・クリフ、名前のない少年…、ヒアアフター、完全なる報復、ジーザスC、ビン・ラディンを探せ
人が幼年向けに実施しているサマーキャンプの様子などが紹
介されるが、迷彩服で顔にカモフラージュ用メイクをした子
供たちが模擬戦争を行うパフォーマンスに始まり、扇情的な
活動が描かれる。
それはもちろん批判的な立場で取材されているから、その描
き方には毒があるが、作品では巻頭から福音派に批判的な立
場を明らかにしているから、その辺は妙な誤魔化しなどもな
くストレートで理解しやすいものだ。
しかもその取材を意図を了解させた上でかなり内部まで行っ
ているのは、ある意味見事とも言える作品になっている。
それにしても、基本的に「宗教は嫌い」な立場から観ている
と、盲目的な信者を育てようとするこの人たちの考え方には
恐ろしさを感じざるを得ない訳で、ここに登場する子供たち
が10年、20年先にどうなっているかには、暗澹とした気持ち
にもなる。
でもまあ、よほどの純粋培養をしなければ、子供の挫折なん
てすぐ来てしまうもので、その時にこの大人たちがどこまで
彼ら支援できるのか、単に脱落者として切り捨てるのか、そ
の辺がこれから注目して行くべきところだろう。
因に作品中では、最後に彼らの政治力が発揮されて福音派の
最高裁判事が誕生しているが、その結果、子供たちまで動員
してホワイトハウスに訴えた中絶禁止が実現したのか否か、
その辺がどうなったのかは気になったところだ。
『ビン・ラディンを探せ!』
“Where in the World Is Osama Bin Laden?”
2004年“Super Size Me”で話題を振りまいたドキュメンタ
リスト=モーガン・スパーロックが、9/11同時多発テロを
引き起こしたテロリストの権化とも言えるオサマ・ビン・ラ
ディンの消息を求めて中東諸国を直撃取材した作品。
製作の切っ掛けは妻の妊娠。産まれてくる子供が安全な世界
で育つことを願った監督は、世界を危険に陥れているとされ
る人物=オサマ・ビン・ラディンを求めて、妻の出産予定日
までの限定で中東へ取材の旅に乗り出す。
その取材国は、エジプト、モロッコ、ヨルダンからパキスタ
ン、サウジアラビア、アフガニスタン、さらにイスラエル、
パレスチナまで及んでいる。また取材先も、一般市民からビ
ン・ラディンその他のテロリストの親戚など、かなり克明な
ものだ。
そしてその取材は、最初はビン・ラディンを探すという単純
なものから、徐々に中東におけるアメリカの立場というよう
なものに変化して行き、アメリカが中東で行っている政策へ
の批判ではないまでも、かなり反省の色も見える作品になっ
ている。
特にそれは、中東の一般市民や学生にアメリカに付いてのイ
メージを聞くシーンや、その一方でイスラエルでの取材の様
子などでは、アメリカが行っていることへの疑問のようなも
のも丁寧に描かれているものだ。
それは日本人の我々が見ていると、何をいまさらという感じ
のする部分もない訳ではないが、スパーロックのような人物
がようやくそれに気付いて描いてくれたということにもなる
もので、これがアメリカで公開されることが重要なのだとも
感じられた。
それにしても作品の中では、アラブ人はアメリカに批判的で
はあってもスパーロック本人には友好的であるのに対して、
ユダヤ人がことさらのようにスパーロックに反論し、果ては
暴力まで振るってくるという描き方は衝撃的だった。
なお最後に紹介した2作は、TOKYO MXテレビで放送中の「未
公開映画を観るTV」で紹介されたもので、その中から9本
が東京は12月25日から順次劇場公開される内の2本となって
いる。
11月21日(日)
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