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On the Production
by 井口健二
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■世界のどこにでもある場所、君を想って海をゆく、MAD探偵、食客2、ギャングスタ、戦火の中へ、HPと死の秘宝、ジャライノール
壊と、新たに提示される死の秘宝の謎の解明。
しかし、今までハリーたちを導いてきたホグワーツ魔法学校
の先生方や不死鳥の騎士団のメムバーのほとんどはすでに亡
く、3人は全て自らの力だけでその謎を解いて行かなければ
ならなくなる。そこには最大の試練が待ち構えていた。
全長5時間と予想される上映時間についてはいろいろ意見は
あるだろうが、Part 1を観た限りにおいては、ようやくこれ
で原作の読者も満足できる映画化になったと言えそうだ。
実際、第1作、第2作は別として、第3作以降は原作がどん
どん長くなって行くのに対して映画の上映時間はほとんど変
らず、その分の物語の欠落が多くなっていた。その点に付い
て本作Part 1は、観た限りの欠落も少なく満足できる映画化
になったと言えそうだ。
出演者はシリーズ全体を通してのメムバーがほぼ全員顔を揃
えて再登場し、監督は前々作『不死鳥の騎士団』から登板の
デイヴィッド・イェーツ、脚本はその『不死鳥の騎士団』を
除く6作手掛けたスティーヴ・クローブス。
つまり前作『謎のプリンス』から始まっている結末に向けた
流れが、キャストもスタッフも万全の体制で結実することに
なりそうだ。
なお本作の3D上映は、10月17日付で既報の通り、見合わさ
れることになった。
『ジャライノール』“扎賚諾爾”
題名は、中国最北部・内モンゴル自治区満州里にある中国で
5番目に大きい淡水湖ダライ湖(ダライノール)に由来する
地名。そこにはロシア帝国時代の1901年に敷設された東清鉄
道があり、その蒸気機関車の燃料供給用にジャライノール炭
坑は拓かれた。
以来100年を超える歴史を経て、最盛期は構内掘り16カ所、
露天掘り3カ所の採炭場を有する内モンゴルでもトップクラ
スの炭坑となったが、石炭需要の低下と市場経済の導入で経
営が悪化、現在は採炭そのものも見直しが進んでいる。
そのジャライノール炭坑で、採掘された石炭を搬出するのは
何両もの蒸気機関車。多数の蒸気機関車が現役で働いている
姿を観られるこの炭坑は、世界中のSLファンから「最後の
聖地」とも呼ばれる場所になっているそうだ。
しかしその聖地も、コスト面などからトラックやディーゼル
機関車への移行が進められ、今年中にも蒸気機関車の姿は観
られなくなるとも言われている。
そんなジャナイノールが舞台の作品で、物語の主人公は蒸気
機関車の運転で30年を勤め上げた老機関士とその車両に同乗
する若い警手。2人は歳は離れても仕事が終っても一緒に行
動するほどの仲だったが、その老機関士が退職して娘の許に
戻ることを決意する。
そしてその退職の日、老機関士の見送りに来た若い警手は、
そのまま機関士の後を追って離れようとしない。一方、機関
士も警手に帰れと説得はするのだが…蒸気機関車そのものが
終焉の時を迎える中で哀惜を込めた物語が展開される。
脚本と監督はチャオ・イエ。2007年の長編デビュー作『馬烏
甲』が中国国内で受賞している新進監督の第2作で、本作で
は2008年釜山国際映画祭で批評家連盟賞を受賞している。因
に監督の第3作は日本で撮影されているそうだ。
それにしても巨大な窪地のような露天掘りの斜面を走る蒸気
機関車と、その背景にも何両もの白煙を上げる蒸気機関車の
観える風景は、それだけでもSLファンなら涙が出てくるく
らいのものだろう。そんなシーンが何カットも登場する。
なお本作はHDで撮影されているが、画質や色補正の乱れな
ど技術的に気になるところが何点かあった。しかししっとり
した物語と、それに何より蒸気機関車の勇壮な姿が魅力的な
作品だった。
11月14日(日)
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