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On the Production
by 井口健二
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■すべて彼女の…、処刑山、海の金魚、やさしい嘘と贈り物、フローズンR、パーフェクトG、パラノーマルA、シェルター、サロゲート(追)
ポイント』や2005年のテレビラマ“Elvis”でゴールデン・
グローブ賞受賞のジョナサン・リス・メイヤーズ共演による
超常心理サスペンス。
モーアが扮するのは女性心理学者。多重人格など存在しない
という立場でその病を装った犯罪者の実体を暴き成果を挙げ
ている。そんな彼女に、多重人格の存在を認めているらしい
父親の心理学者から1人の患者が紹介される。
メイヤーズが扮するその患者は、最初は大人しく診察にも応
じていたが、父親が行ったあることを切っ掛けに態度を豹変
させ、多重人格の症状を見せる。しかもその人格の一方は、
患者が6歳の時に起きた殺人事件の被害者のものだった。
その事実に興味を持った主人公は過去の事件の背景を調べ始
めるが、それはやがて驚愕の真実を彼女の前に曝すことにな
る。
多重人格の話は、最近ではダニエル・キースの著作などでも
話題になっているが、本作ではプロローグからそのことが否
定され、かなり小気味よい展開で話が進められて行く。しか
も多重人格の症状自体が普通のものとは異なり、その辺の興
味でも引っ張られる。
そしてその結末は超常的なもので、その謎解きもなかなか巧
みに作られている作品だ。脚本は2003年『“アイデンティテ
ィー”』などのマイクル・クーニー。前作も多重人格が物語
の背景に有ったが、本作では真正面からそれを描いている。
監督は、スウェーデン出身のマンス・マーリンドとビョルン
・ステイン。幼馴染みという2人の監督の経歴では、『ジェ
ネシス』(原題Storm)という作品が過去にDVDで紹介さ
れているようだが、本作でハリウッドに進出、日本でも本格
公開となるものだ。
共演は、2007年3月紹介『ハリウッドランド』に出演のジェ
フリー・デマン、2007年6月紹介『ウィッカーマン』などの
フランセス・コンロイ、今年9月紹介『君がぼくを見つけた
日』で主人公の幼少時代を演じていたブルックリン・プロウ
ルクスなど。
基本は超常ドラマだが多重人格ものとしても面白く、特に、
メイヤーズの人格が変化する際の切り替えは見事だった。ま
た、映画の中で明かされるタイトルの意味にも興味深いもの
が有った。
『サロゲート』“Surrogates”(追記)
11月15日付で紹介した作品だが多少気になることが有ったの
で試写を見直した。因に気になったのは、遠隔操縦のロボッ
トを通じてそのオペレーターを殺せるかという点なのだが、
それに関しては安全装置を先に破壊する…などの説明は有っ
ても、肝心の死因についてはやはり映画の中でも誤魔化され
ていたようだ。
しかし、再観すると別の点にも目が行くもので、それでこの
作品が意外とSFになっていることに気付かされた。それは
端々の設定の細かさなどにも拠るものだが、中でも軍事目的
で兵器として開発された装置が、人を殺すという理由で軍が
手を引いたという下りには、やられたと思ってしまった。こ
の発想は間違いなしのSFと言えるだろう。
お陰で、この作品の脚本家と監督のチームの評価も少し変え
なければと思ったものだ。試写で観た時に「何だこりゃ」と
思ってそのままにした『T3』も、見直すと何か別のものが
観えてくるのかな。
12月27日(日)
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