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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション以外(2)
かなのだろう。
そして彼女自身は、女優としてまた衣装デザイナーとして数
多くの映画作品に関り、その後にフランス国立映像音響芸術
学院で脚本ワークショップに参加して作り上げたのが本作と
のことだ。
災害や戦災での孤児というのは日本でもあり得るし、親が困
窮して子供を捨てるというのもあるかも知れないが、この主
人公のような状況は余りにも哀しい。もちろんそれが真実か
どうかは、監督にも判らないのだろうが…自分が子を持つ親
として心が痛んだ。

『バーリア』(WORLD CINEMA部門)
『ニュー・シネマ・パラダイス』のジョゼッペ・トルナトー
レ監督の最新作で、本年ヴェネチア映画祭のオープニングを
飾った作品。
イタリアのシチリア島パレルモ市の郊外に位置するバゲリー
ア。地元の人は親しみを込めて「バーリア」と呼ぶその町を
舞台に、1930年代から80年代に至るこの地の激動の歴史が、
その地に生まれ育った監督の手で描き出される。
その町には、教会に繋がる数100メートルの街路があった。
その街路を中心に物語は描かれる。そしてプロローグでは、
買い物を頼まれた少年が街路を懸命に走り、やがてその街路
を見下ろす夢のような展開となるが…
その少年は、家族のために羊を追う仕事に従事して苦労をし
たり、その羊を追って訪れた山の上では1個の石を1投で3
つの岩に当てると財宝が手に入るという伝説を聞いたり、さ
らには黒シャツ隊に抵抗する共産党員となったり…という人
生を送って行く。
その一方で、家族との暮らしも彼の人生にしたがって浮き沈
みが繰り返されて行く。
出演者は新人が中心のようだが、中には監督の『マレーナ』
に主演したモニカ・ベルッチが顔を出したりもしていたよう
だ。また、音楽を大ベテランのエンニオ・モリコーネが手掛
けている。
プロローグでは小さな町だった「バーリア」が、徐々に発展
し大きな町になって行く。しかしその発展は人々にどのよう
な幸せをもたらしたのか。そんなことも含めた近世イタリア
史が描かれていた。
なお、映画に登場する「バーリア」の町並は全てセットだそ
うで、その準備には9カ月、建設には1年が掛けられ、撮影
は25週間にもおよんだそうだ。上映時間2時間45分、さすが
名匠の渾身の1作という作品だ。

10月23日(金)
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