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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション以外(1)
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※このページは、東京国際映画祭での上映作品の中から、※
※僕が観て気に入った作品を中心に紹介します。    ※
※以下はコンペティション以外の上映作品の紹介です。 ※
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『石油プラットフォーム』(natural TIFF部門)
カスピ海油田を採掘する巨大な海上基地(オイルロックス)
の歴史と現在、そして未来を描いたドキュメンタリー。
1945年に試掘が始まったカスピ海油田は、1949年に初めて油
井が掘り当てられ、それから60周年が迎えられようとしてい
る。そんな石油採掘基地には今も2500人の人員が働いている
そうだ。
その基地には、往時には陸地から延長300kmにも及ぶ架橋が
なされ、大型トラックも運び込まれたが、歴史の流れに翻弄
されて今は橋も崩壊し、人々は船で6時間掛けて移動してく
るようだ。そして基地では3交代のシフトで昼夜兼行の作業
が行われ、10日働いて3日の休み、その休みの日には陸地ま
で帰る人も多い。
そんな基地は、開設当初は共産政府の管理の許、委員会の指
導で作業が行われ、その委員会の指導者として開設当初から
働いてきたという女性などが登場し歴史が語られて行く。そ
こにはフルシチョフの来訪やボリショイ劇場の公演なども行
われ、その記録フィルムなども紹介される。
それにしても、世界最初、そして恐らくは最大規模の石油採
掘基地の偉容はかなりの迫力で映像に納められていた。しか
しその施設も老朽化が進み、60周年を目指して改修も進めら
れているが、折りからの不況でその先行きも定かではなく、
さらに後20年で油田が枯渇するという現実も重くのしかかっ
ている。
市場経済化で世界に出てみたら国営企業の採算度外視の経営
でコストが掛かり過ぎていたとか、その後の石油の高騰でそ
れでも採算が取れてしまったとか、いろいろ興味深い情報も
多く、基地自体の映像と共に楽しめる作品だった。誰かここ
を舞台にアクション映画を撮ってくれないかな、そんな気分
にもさせられた。

『つむじ風食堂の夜』(日本映画・ある視点部門)
吉田篤弘の原作から、『地下鉄(メトロ)に乗って』などの
篠原哲雄が監督した作品。雪の舞う北の町の小さな大衆食堂
を舞台に、そこに偶然足を踏み入れた主人公と常連客たちと
の交流が描かれる。
物語は6つの章立てで進められ、それにより主人公の人とな
りなどが徐々に明らかにされると共に、常連客たちとの繋が
りも深まって行く。
そしてその各章の物語は、静かなタッチではあるが情感の込
められたもの。宣伝文にはノスタルジックファンタシーとあ
ったが、正にそんな感じの物語が『地下鉄…』より静かに進
められる。まあ、地下鉄より騒がしいことはあまりないとは
思うが。
主演は、八嶋智人、共演は元宝塚の月船さらら、他に下條ア
トム、田中要次、生瀬勝久らが脇を固めている。さらに主題
歌を担当した歌手のスネオヘアーもぎこちない演技で登場す
る。
舞台劇をそのまま観ているような感覚の作品で、映画の途中
には合成なども使われるが、それもスクリーンプロセスでも
使えば舞台でも実行できるものだ。ちょっと大げさな感じの
演出も、そうと理解すれば気にはならないだろう。
物語の中には「二重空間移動装置」なるものが登場して、空
間だけでなく時間も移動してみせるが、それも解釈のしよう
でSFと呼ぶほどのものではない。でもまあファンタシーと
言えばそうとも言えるものだ。
物語の中にはちょっと変な古本屋が出てきたりもして、その
辺りは昔ながらの本好きには心地よさも感じられた。全編が
函館にロケされているらしい街角の映像も美しく捉えられて
いた。

『イニスフリー』(natural TIFF部門)
1952年に公開されたジョン・フォード監督作品“The Quiet
Man”が撮影されたというアイルランドの田舎町に取材した
ドキュメンタリー。
東京国際映画祭では環境問題をテーマにしたnatural TIFFと

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10月20日(火)
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