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On the Production
by 井口健二
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■ターミネーター4、コネクテッド、地下鉄のザジ、ウィッチマウンテン+製作ニュース他
 原作は、『バットマン』のテレビシリーズなども手掛ける
アダム・ビーチェンの執筆によるもので、物語は怪我で引退
を余儀なくされたアメフトの選手が、生活のために著名な悪
人の子分になるというもの。かなり捻った設定のお話だが、
普通では余り描かれないスーパーヒーローに対決する悪人た
ちの世界が見られることになりそうだ。
 製作は、ワーナーでは『アイ・アム・レジェンド』などを
手掛けてきたニール・モリッツ。また主演には『トロピック
・サンダー』などのダニー・マクブライドが決まっていて、
マクブライドは製作と脚本も担当することになっている。
 因にマクブライドは、上記の作品からも明かなようにコメ
ディアンで、今後の作品ではウィル・フェレル主演の“Land
of the Lost”なども控えている。また、ナタリー・ポート
マンとジェームズ・フランコが共演する“Your Highness”
でも共演と脚本も手掛けており、その評価は高いようだ。
 今回はそのコメディ作家がグラフィックノヴェルの世界に
挑むもので、ワーナーでは大作路線の製作者モリッツと大型
のコメディ作品に仕上げてくれたら期待が増すところだ。
        *         *
 最後に本を1冊紹介しておこう。
『ぼくと1ルピーの神様』“Q and A”
今年のアカデミー賞で作品賞など8部門を受賞した『スラム
ドッグ$ミリオネア』の原作本。
このサイトは本来映画の紹介の目的で開いているものだが、
この本に関しては映画会社の関係で送られてきたのと、映画
との関連にも興味深いものがあるので紹介する事にした。映
画を観た後で読むと、それぞれに全く違った良さが感じられ
るものだ。
この本を読んでいてまず驚くのは、原作本と映画との物語の
展開がかなり違っていることだろう。実際、映画に出て来る
エピソードの多くは原作には書かれていないものだ。もちろ
ん、主人公が高額の賞金の掛ったクイズで優勝しそうになっ
たために警察に逮捕され、拷問を受けるという展開は同じだ
し、そのクイズの答えをなぜ知っていたかという点が物語の
骨子になることに関しても同じなのだが、そこに描かれる答
えに繋がるエピソードが全く異なっている。
その問題の答えは、映画では西欧人にも解り易いような西欧
文化に関るものがほとんどだったが、原作のそれは、もっと
インドの現代史に関るものが中心になっていた。そこにはイ
ンド=パキスタン戦争など、正にインド人にとっての苦闘の
歴史が物語られているのだ。
もちろん映画の物語も素晴らしいものだったが、映画にはい
ろいろな作劇上のトリックもあって、現実には辻褄の合わな
い部分も散見されたものだ。それに対してこの原作本では、
もっとストレートに物語が作られていて、それは他民族であ
る僕らには分り難い部分もあるが、より深くインドの現状が
描かれているものでもあった。
外国映画、特にアジアやアフリカの映画を観ていると、もっ
とその国を知らなければいけないと思うことがままあるが、
この本もそれと同じような気持ちにさせられた。
この本は映画化作品とは全く違う。だからこそ映画を観た人
にも読んでもらいたいものだ。

05月31日(日)
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