ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■キズモモ、東京残酷警察、シルク、ワイルド・バレット、女工哀歌、春琴抄、ゾンビ・ストリッパーズ、文七元結
茶屋を訪ね、家の借金を払うために自分の身体を売りたいと
言い出したのだという。
駆け付けた父親に茶屋の女将は、金50両を貸すから今ある借
金を払い。しっかり1年間を働いて貸した金を返すように説
教する。その間は、お久に客は取らせないという条件だ。そ
こで長兵衛は心を入れ替えると誓うのだが…
その帰り道、大川端で若い男が身を投げようとしているのを
発見した長兵衛は、その男が預かった店の金50両をスリに盗
られたと聞かされ、人の命には替えられないと、借りたばか
りの50両をその男に与えてしまう。
元の落語は、僕は故三遊亭円生の高座で聞いているが、「黄
金餅」「紺屋高尾」と並ぶ江戸商家の縁起話の一つで、中で
もこの話は、笑いの中にほろりとさせられる人情が上手く織
り込まれて、僕はいつもそれに行かされてしまった方だ。
それに今回は、演じている歌舞伎役者たちの口調が円生師匠
にそっくりで、それも心地良かった。そんな訳で、話が佳境
に入ってからはスクリーンがぼやけることも多くなったもの
で、知った話を別の形態で観るのも良いと認識できた。
舞台が、歌舞伎としてどのように評価されているかは知らな
いが、落語好きの自分としては、充分に満足できる作品だっ
た。
ということで、作品は気に入ったのだが、実は今回の撮影、
上映に関してはいくつか引っ掛かるところがあった。
まずは上映だが、僕が見た試写会では多分2.35:1のスクリ
ーンに、16:9の映写が行われていた。つまり、スクリーン
の両側に余白があり、マスクがされていなかったもので、こ
れは場末のポルノ館ではあるまいし、プロの上映としてはか
なりお粗末なものだ。
それに撮影がパンフォーカスでないのも気になった。特に座
った全身が写る程度のサイズの時に後ろの役者の表情がぼや
けている。これは舞台面の撮影であることを考えると、観客
は全ての役者に目が行くもので、それがぼけていてシネマ歌
舞伎はおかしなものだ。
今回の作品は題材が好きな話なので目を瞑ることにするが、
今後も続く計画のシリーズでは、特にプロにはプロとしての
仕事を期待したいものだ。

08月10日(日)
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