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On the Production
by 井口健二
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■今日という日が最後なら、カスピアン王子、イントゥ・ザ・ワイルド、落下の王国、スピード・レーサー、8½、帰らない日々、BUG
癒しが主なテーマだった日本映画とは、根本的な発想の異な
る作品だが、かなり無理があるようにも見えるシチュエーシ
ョンを、力づくで納得させてしまうような演出は、ある意味
フィクションの醍醐味を感じさせる作品でもあった。
監督は、『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージ。前作は
国際問題、今回は国内の問題だが、いずれもしっかりした社
会問題を描き、特に今回は登場人物たちの葛藤も丁寧に描き
出している。
出演は、ホアキン・フェニックス、マーク・ラファロ、ジェ
ニファー・コネリー、ミラ・ソルヴィノ。さらに、エル・フ
ァイング、エディ・アルダーソンの2人の子役が見事な演技
を見せてくれている。

『BUG』“Bug”
『エクソシスト』のウィリアム・フリードキン監督が、オフ
・ブロードウェイで上演された舞台劇を基に描き出す恐怖物
語。
物語の舞台はとあるモーテルの1室。そこには仮釈放される
暴力的な夫から逃れようとする1人の女性が宿泊している。
そこに掛ってくる無言電話。おびえる女性は、女友達から紹
介された男性を部屋に呼び寄せるが…
互いに似たところもあり、次第に打ち解けて行く2人だった
が、その2人の耳に虫の鳴き声が聞こえ始める。それはただ
の虫ではなく、やがてその虫の存在が2人を恐怖の世界へと
誘って行く。
背景には、湾岸戦争やその他の出来事に起因するconspiracy
theoryのようなものが巧みに織り込まれていて、日本人の目
からするとかなり奇異な感じもしてしまうところだが、多分
アメリカ人には現実的な恐怖として映るはずのものだ。
アメリカでは、最近もMorgellons病とかいう奇病が報告され
ているようだが、政府や軍による秘密実験という噂話は常に
流されている。そんな背景があると、この映画の物語もそれ
なりの現実味を帯びてくる。
それを一概に馬鹿々々しいと言ってしまえる日本人は、果た
して己の考えを正しいと言い切っていいのか、自分たちの考
えこそが無知蒙昧の結果ではないのか、脳天気国民の日本人
にはそんなレヴェルからこの作品をアピールする必要があり
そうだ。
原作の舞台劇と映画化の脚本も手掛けたトレイシー・レッツ
は、1998年のトミー・リー・ジョーンズ主演作『追跡者』な
どにも出演していたという俳優で、脚本家としては作品がタ
イム誌選出の年間ベスト10にも選ばれたことがあるそうだ。
出演は、アシュレイ・ジャド、マイクル・シャノン、リン・
コリンズ、ハリー・コニックJr.。ちょっと癖のある顔ぶれ
が強烈な演技を見せてくれている。なおシャノンは、原作の
舞台でも同じ役を演じていたそうだ。
物語を信じる信じないかは別にして、見事に舞台劇を観てい
るという感じにもさせてくれる作品。その感覚も楽しめた。

05月18日(日)
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