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On the Production
by 井口健二
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■バンテージ・ポイント、カフェ代官山、愛おしき隣人、告発のとき、ラフマニノフ、ねこのひげ、恋の罠、チェスト!
現されている。特に提灯などを使った華麗な映像は、かなり
周到な準備の基に作り出されたもののようだ。
とは言うものの、物語は必要以上に重くすることなく、ある
種軽快に描かれている。それはハンのキャラクターによると
ころもありそうだが、正に第1級のエンターテインメントと
いう感じの作品だ。
因に、プレス資料には李朝と日本の春画に関する解説が載せ
られていたが、李朝の春画は日本のものに比べて写実的なの
だそうだ。そんな事実が物語の背景にもあるようで、その真
髄を追求しようとする主人公たちの行動にも頷けるところが
あったものだ。
『チェスト!』
小学生による鹿児島県錦江湾横断遠泳を背景に、訳ありの3
人の少年たちが成長して行く姿を描く。2006年の第8回日本
映画エンジェル大賞受賞企画の映画化。
自分が泳ぎが得意でないせいもあるが、どうもこの手の話は
引いてしまう。特に遠泳などと言われると、ああどうせ根性
・根性の話になるのだろうな、とも思ってしまう。
根性もコメディならなんとか許せるが、小学生の話では精神
論になるのが関の山、と言う先入観も生じるところだ。でも
映画には作りやすいし、作れば教育委員会などが推薦もして
くれそうで、それなりの評価も得やすいのがこの手の作品だ
ろう。
実際、エンジェル大賞は2002年第1回に2005年3月紹介した
『リンダリンダリンダ』が選ばれ、最近では去年10月紹介の
『全然大丈夫』が2004年第4回の受賞作だそうだが、それら
に比べるとずいぶん早く映画化されている。つまりそういう
企画ということだ。
と嫌みをいくつか書いてしまったが、「映画の食わず嫌いは
しない」が僕のコンセプトなので、この作品も観に行った。
で、観た感想はこれが意外と良かった。
まず本作で気に入ったのは、精神論がほとんど出てこない。
実際、この映画の中で精神論はある意味負けている。それで
も主人公たちが遠泳に立ち向かって行く姿が、それなりに子
供の目線でうまく描かれている感じがしたものだ。
そこには、離婚、リストラなどの社会的状況もそれなりに織
り込まれて、大人にも大人なりに理解できる物語になってい
た。まあ、多少くどいところもあるが、子供にも理解しやす
くすればこうなるのも仕方ないだろう。
ただ物語の設定で、3人のうち2人は遠泳に参加できない理
由が明白に描かれているのだが、肝心の主人公の理由があま
り納得できない。カナヅチというのがその理由というが、父
親が漁師でそれはないだろうというのが単純な印象で、ここ
にもう一つ何か明白な理由が欲しかったところではあった。
因に題名は、鹿児島地方で「気合いを入れるときのかけ声」
だそうで、最初は主人公が胸を叩いて使うのでchestの誤用
かとも思ったが、そうではなかったようだ。
02月10日(日)
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