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On the Production
by 井口健二
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■スウィーニー・トッド、俺たちの明日、うた魂♪、魔法にかけられて、奈緒子、胡同の理髪師、L、マイ・ブルーベリー・ナイツ
ただしその分、他の新登場キャラクターに戯画化の印象が強
いことは否めない。元々、マンガが原作なのだから戯画化は
認められるべきかもしれない。しかしそこにおける存在感は
必要なはずだ。その存在感が今回のLには感じられたと思え
る。だが、その他のキャラクターに関しては…
実は、試写会で配られたプレス資料によると、一部の出演者
には監督の演技指導がされなかったようだ。その辺が原因か
とも思えるところだが、ハリウッドでも認められた中田秀夫
監督をして、何故そうなのかを知りたいところだった。
他の出演者は、福田麻由子と福田響志の子役に加えて、工藤
夕貴、鶴見辰吾、高嶋政伸、南原清隆ら。また、CGIのリ
ュークを含めて前作の登場人物たちも顔を見せる。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』“藍莓之夜”
ウォン・カーウァイ監督で、2007年のカンヌ映画祭オープニ
ングを飾った作品。
監督の前作『2046』は、SFという事前の情報もあって
期待して観に行ったものだが、まあ何と言うかストーリーも
支離滅裂で、何とも評価に困る作品だった。
それで今回も多少心配をしながら試写会に向かったのだが、
さすが2作連続で同じ轍を踏むことはなかったようだ。その
意味では、かなりの安全作とも言える感じの作品で、落ち着
いて観られる物語が展開していた。
物語の発端はニューヨーク。その街のとあるカフェに、1人
の女性客が現れる。彼女は売れ残りのブルーべリーパイを食
べ、カフェの男に預けたアパートの鍵の話をする。その店で
は、いろいろな人から預かった鍵が、大きなガラス瓶の中に
保管されていた。
そして彼女は立ち去るが、やがて彼の許に彼女からの手紙が
届き始める。それにはニューヨークから遠く離れた場所で、
彼女が関った人々の物語が綴られていた。
このカフェの男にジュード・ロウが扮し、旅をする女性を歌
手のノラ・ジョーンズが演じて映画デビューを飾っている。
さらに彼女が旅先で出会う人々として、『グッドナイト&グ
ッドラック』でオスカーにノミネートされたデイヴィッド・
ストラザーン、『ナイロビの蜂』で受賞のレイチェル・ワイ
ズ、『クローサー』で候補になったナタリー・ポートマンら
が登場する。
物語は、ニューヨーク、メンフィス、そしてラスヴェガスで
展開されるが、それぞれいろいろな形の愛を描いたもので、
その物語がまず素晴らしかった。
『2046』では、監督は事前に脚本を書かず、当日俳優や
スタッフにメモを渡して撮影を行ったと聞いたが、本作では
事前にローレンス・ブロックと共同で脚本が作られたという
ことで、その辺は多少やり方が違っていたようだ。
それでも俳優の役作りはかなり自由に任され、撮影中に監督
と俳優が一緒になって役を作り上げていったそうだ。
その中でジョーンズの演技は、初めてとは信じられないくら
なもので、さらにその彼女を暖かい目で見つめ続けるロウの
演技が素晴らしく、それだけでも観る価値を感じる作品だ。
なお本作は、カーウァイ初の英語作品となっている。

01月06日(日)
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