ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460310hit]
■明日への遺言、Mr.ビーン、テラビシア、アメリカン・ギャングスター、勇者たちの戦場、そして春風にささやいて、トリコン、黒い土の少女
ギャグはなかったし、それなりに観られる作品にはなってい
た。それだけの進歩の後は見えるものだ。
主演は、進藤学、南圭介、八神蓮。
この主人公たちが名告るときに一々ポーズを取るのだが、主
演の3人がそれなりに真剣にやっているのは好感が持てた。
もっとも、これが最近の若者の乗りなのかなという感じでも
あったが。なお主演の3人は、この作品の主題歌も歌ってお
り、CDも出ているようだ。
共演者には、根岸徹と長内美那子がいて、特に長内は、存在
感もあって良い感じだった。
『黒い土の少女』“검은 땅의 소녀와”
日本と同様、韓国でも斜陽の代名詞のような炭坑の街を背景
にした物語。
主人公の少女の父親は、じん肺で炭坑夫の仕事を辞めさせら
れるが、合併症がないと以後の治療費の保障はないと言われ
る。それには労組も動いてはくれているが、規則の壁はぶ厚
いようだ。
退職した父親は行商の仕事を始めるが、そこでは詐欺まがい
の手口にあってなけなしの資金も失ってしまう。ここでの展
開は本当にありそうで、身につまされる。そして父親は徐々
に酒浸りになって行く。
少女の家に母親の姿はないが、その経緯などは語られない。
ただ画面には何度か思わせぶりな女性の姿が写し出される。
しかし、それについて監督は「それは観客の目を代表した存
在だ」として明言は避けているものだ。
そして少女には知恵遅れの兄がいて、彼女はいつもその世話
を焼いているが、いたいけな少女のその姿は、『おしん』な
どにも通じる感動を呼ぶシーンと言えそうだ。多分映画の評
価もそうなるだろう。
この少女の役は、1999年生まれのユ・ヨンミが演じている。
すでに韓国テレビでも人気のある子役とのことで、その実力
は確かなものだ。特に、兄と一緒にバスに乗っているシーン
でのかなり長い一人芝居には驚かされた。
父親役は、『大統領の理髪師』で大統領を演じていたチョ・
ヨンジン。そして謎の女性役で韓国の国民的女優と言われる
カン・スヨンが特別出演している。
監督のチョン・スイルは、ソウルに拠点を置かず、釜山を中
心にした映画作りをしているようだ。そんな監督の視点が見
事に活きた作品といえる。そしてその視点は、日本にも共通
するようにも感じられた。
なお、映画の舞台は韓国江原道の某街となっていて正確な場
所は特定されていないものだが、2005年12月に紹介した『春
が来れば』の舞台となっていたトゲ(道渓)に似ている感じ
がした。もちろん炭坑町の風景など、どこも同じなのかもし
れないが、途中で映る大きく湾曲した鉄道線路の風景はよく
似ている感じがしたものだ。
12月20日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る