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On the Production
by 井口健二
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■リトル・チルドレン、ミス・ポター、レミーのおいしいレストラン、幸せの絆、フロストバイト、ウィッカーマン、遠くの空に消えた
ら現地建設事務所の所長として赴任してきた役人の父子家庭
の息子と、地元の母子家庭の少年、それに父親がUFOに連
れ去られたと言い張る少女の交流が描かれる。
「最後の夏休み、史上最大のいたずらを!」というキャッチ
コピーと、人気子役の共演。これで「文部省特選」のような
ノスタルジックな「児童劇映画」を期待していると、そうで
ないことはすぐに判明する。
物語はいきなり神木とささのの立ちションという、PTAが
観たら眉をひそめそうな描写から始まってしまうのだ。
それから後も、西部劇のサロンを思わせるようなバー(ただ
しホステスはロシア人)や、画面の端から端まで続く建設反
対派の砦など、ちょっと尋常でない風景が次々に登場してく
る。さらに、人工の羽根で空を渡ってくるチャン・チェン扮
する男など…
とにかくこの映画は変だ、と思い始めた辺りで、この映画は
その「変」を楽しむ作品だということにも気付かされる。そ
して、その変な映画をもっと変にするために、小日向文世、
伊東歩、長塚圭史、石橋蓮司、大竹しのぶ、三浦友和らが奮
闘している。
でもここまで書いて気が付くのは、結局変なのは大人たちだ
けであって、子供たちはそんな大人の「変」を後目に常に純
粋さを持って物事に対処して行く。その子供の純粋さが、中
心となる3人を始め、多くの子供たちによって見事に描かれ
た作品でもある。
大人たちの「変」を観ているときには、黒澤明監督の『どで
すかでん』が思い浮かんだ。どちらも大人の世界を戯画化し
て描いたものだが、日本映画にありがちな不自然さは押さえ
られ、自然な演技の中での戯画化には、本作も成功している
と思えた。
そこに子供たちの自然な描写が融合されたもので、このかな
りトリッキーな構成を本作は実現している。そこでは子供た
ちの演技を野外シーンに置き、大人の演技を室内シーンとす
ることでもメリハリをつけているが、バランスを崩さずに実
現した演出は見事だ。
物語はファンタシーであり、メルヘンだ。そこには現実の厳
しさも見え隠れするが、子供たちの純粋さによってそれは緩
和される。大人に子供の純粋さを再確認させる、そんな作品
に思えた。
06月30日(土)
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