ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460095hit]
■ピーナッツ、スタンド・アップ、バトル7、Mr.&Mrs.スミス、イヌゴエ、ホテル・ルワンダ
抗争が勃発する。
この抗争に対しては、国連の平和維持活動(PKO)が実施
され、カナダ軍を中心とした300人の兵士によって治安の監
視が行われていた。そしてこの年、フツ出身の大統領の許で
部族間の和平が調印される。しかし、それは逆に抗争の火に
油を注いでしまう。
物語の舞台は、ルワンダの首都キガリにある高級ビジネスホ
テル=ミル・コリン。そこで支配人を務めるポールはフツの
出身だが、彼の妻タチアナはツチの出身者だった。また、ホ
テルの従業員には両部族の人たちが入り混じっていた。
そんな中、一応抗争も気掛かりなポールだったが、ホテル支
配人の立場を利用した各方面への賄賂攻勢などで、もしもの
時には家族だけでも身の安全が守られるよう手は打っている
つもりだった。従って和平が崩れ始めたときも、多少はたか
を括っていたのだが…
西欧人が多く宿泊し、外国マスコミも滞在しているホテルは
聖域と思われたのか、和平が崩れるや否や難を逃れたツチの
人々がホテルに雪崩れ込んで来る。これにより一転、ツチを
匿っていると見なされたホテルはフツの民兵の標的となって
しまう。
しかし最初の内は、事前の賄賂などが功を奏してルワンダの
正規軍が派遣されて安全が守られる。だが、和平崩壊の報道
によって急遽派遣された英米仏軍は、西欧人だけを救出して
去ってしまい、やがて避難者の数は1280人にも膨れ上がる。
そんな状況の中で、ポールの孤軍奮闘が始まる。
ジェノサイド(部族の皆殺し)を描いた作品では、1984年の
『キリング・フィールド』が思い出される。あの作品でも虐
殺の模様はいろいろ描かれていたが、外国人の目で描いた物
語と当事者の物語では、当然その切実さがまったく違う。
特にポールは、上記のようにたかを括っていたような人物だ
から、事態が一変してからの焦りや恐怖の様子は、もし自分
だったら同じことになってしまうだろう…そんな直接的なイ
ンパクトを感じてしまうものだ。
また1984年の作品が、ある意味、自然の美しさと人間の行為
との対比のような描き方をした部分があったのに対して、本
作はそのような余裕など全くなく、ほとんどが緊迫した状況
のまま描かれている点には、現実の世界情勢の緊迫度の違い
も感じさせた。
出演は、主人公の夫婦役に、共にオスカー候補になったドン
・チードルとソフィー・オコネド。他にニック・ノルティ、
ホアキン・フェニックスらが共演。また、ジャン・レノがか
なり重要な役で出演しているが、ノンクレジットだそうだ。
製作、脚本、監督は、北アイルランドの出身で拘留経験もあ
るというテリー・ジョージ。映画の緊張感は、彼の出自にも
関係がありそうだ。
なおこの作品は、当初は日本公開の予定がなかったが、ネッ
ト上で展開された署名運動によって配給会社が動かされ、公
開が実現したというもの。自分も昔『2001年宇宙の旅』
の再上映運動に加担したので、このような話にはちょっとう
れしくなったものだ。
11月29日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る